作品情報 2018年韓国映画 監督:イ・ギョンソプ 出演:キム・ファンヒ、スホ、チョン・ダビン 上映時間:114分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:シネマート新宿 2018年劇場鑑賞28本目
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【ストーリー】
女子中学生のミレ(キム・ファンヒ)は、家では酒を飲んですぐに暴力をふるう父親に悩まされ、学校の友達もおらず、孤独な日々を送っていた。唯一の楽しみはオンラインゲームの「ワンダーリング・ワールド」。そこで本名も知らない他のゲームキャラクターたちとの会話が、寂しい現実を忘れさせてくれた。
図書委員のミレは小説を書いていた。それに興味をもったクラス一の美人で学級委員のベカップ(チョン・ダビン)が話しかけてきて、2人は友達になる。一方、ミレはもう一人の図書委員で、自分に普通に話しかけてくるテヤン(ユ・ジェサン)に好意を抱いていた。そんなある日、「ワンダーリング・ワールド」のサービスが停止されてしまう。しかも、現実世界でも、ショッキングなできごとが起きてしまい、自殺を決意したミレは、ゲーム内で親友だった女性キャラのヒナに、別れの挨拶に行く。ところが、ヒナのプレイヤーは男子学生のジェヒ(スホ)で…
【感想】
子どもの自殺をテーマにした「十二人の死にたい子どもたち」の、いかにも映画っぽい動機とはうってかわって、ちょっとしたつまづきや不幸からだれにでも起きそうなトラブル。親もあてにできないミレにとって、何もかも失ってしまったら、死を決意するに至ったというのはスムーズにはいってきました。
でも、どんなに孤独でも、寂しくても、声をだせれば一人ではないかもしれません。実はジェヒもある事情から自殺を決意していました。そのため、ミレが死ぬといっても、「死ぬのはやめろ」とか「生きていればいいことがある」なんてありふれたことはいいません。この2人の関係が絶妙で、傷を負った者同士が、恋愛とはまったく抜きにして磁石のようにひかれあう様子が非常に良くできていました。上下関係に厳しい韓国ですが、ゲーム内では親友同士。年上のジェヒにため口をしゃべるミレというのも、韓国映画では新鮮で楽しめました。
さて、子どものイジメというのは空気を読んだ付和雷同的なところがあり、風向きが変わったり、自分がいじめに参加しなければどうなるのかわかりません。本作ではそんな人間の弱さも、さりげなく、でもきっちり描いていて、描写が細かいなあと感心しました。そして、子ども達を助けなければいけない親や教師達のふがいなさ。こんなにも生きづらいのに、しっかりと成長していく子ども達をとにかく応援したくなります。
タイトルは、ミレが書いている小説から。飛べなくなって傷ついたときに、やさしく見守ってくれる存在の大きさが実感されます。一方、ゲーム世界のいかにもチープな画像が後半になって効果的に使われていました。ある種ファンタジー的なところもありますし、予告篇にあるような、ヒナがかぶっている女の子の着ぐるみなどシュールなところもあるけれど、見終わったあと、暖かな感情に包まれるのは間違いありません。
キム・ファンヒは「哭声」で衝撃的な登場をした子役ですが、本作では等身大の女の子をしっかりと演じています。どんなにつらくても耐えてきたミレの強さと弱さというのをよく体現していました。スホは韓国のアイドルグループEXOのメンバーです。それがこれまたどこにでもいそうな等身大の大学生になりきっており、向こうはアイドルといえうまいなあと感心しました。上映が小規模なので、ぜひともお見逃し無く。
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