2019年02月04日

デイアンドナイト

 善と悪、過酷な運命といったテーマに正面から取り組んだ意欲的な作品。物語世界に入りこむまで疑問点もありましたが、独特のハードボイルドな世界観は今の邦画の中では貴重です。

 作品情報 2018年日本映画 監督:藤井道人 出演:阿部進之介、安藤政信、清原果耶 上映時間:134分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:シネマート新宿 2018年劇場鑑賞29本目



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 【ストーリー】
 自動車工場を営む父和幸(高橋和也)の自殺で、東京から故郷の東北の町に戻ってきた明石幸次(阿部進之介)。自殺の原因が、地元の大企業の不正を告発したのに、それがでっち上げとされことで村八分になったためとしる。

 仕事もなく困窮する明石の前に、生前の和幸に世話になったという北村(安藤政信)が現れ、彼が経営する児童養護施設で働くことを勧める。実は北村は、児童養護施設の運営費を稼ぐため、地元の自動車窃盗団のリーダーであり、亡くなった和幸も協力していたというのだ。北村の犯罪に協力しながら、父を自殺に追い込んだ大手企業の部長・三宅(田中哲司)に復讐を計画する明石。施設の子ども達のリーダー奈々(清原果耶)は、そんな明石のことを気に掛けるのだが…

 【感想】
 海辺の巨大な風力発電用の風車が回っているところを空撮でとっているところから、ぞくぞくするような感じにはまりました。ロケ地は秋田県ですが、東北の日本海側でしかでないような、寒々とした町の様子、閉鎖的な人間関係、そして雪が降ってからは、一見きれいな雪の裏にあるどす黒いもの、といったものが想起されていきます。明暗を工夫し、質感ある感じで撮った撮影も見応えがありました。そして、男達の泥臭い、それでいて美学を感じさせるたたずまいと、清原果耶の透明感と、まさに極上のハードボイルド。

 そして、タイトルのように人間の二面性、善悪とは何かを考えるストーリーが繰り広げられます。親に捨てられたり、死別した子ども達を養護施設で引き取り、愛情をこめて育てる北村は、施設のために犯罪に手を染めます。大企業の不正を告発した正義の人である和幸もそれに協力していました。一方、善良な市民で町の名士である三宅は、不正隠しのために平気で噓をつき、和幸を自殺に追い込みます。そんな彼も家庭では良き父親であり、同僚からも慕われている様子が、随所で描かれます。

 そんな中、正義とは何なのか、自分の正義を突き詰めることで周囲に迷惑をかけてもよいのか、明石は自分で選択しなければなりません。平穏な日々を守るために犯罪を犯す、不正を許せないために法律では罪とされる復讐をする、世の中単純な正義と不正義ではわけられません。さらに、奈々の存在もそうでした。美少女から慕われることをしりつつ、自分の行動によっては彼女を不幸のどん底に落としてしまう。それが大人の責任なのか。北村も明石も、ある種の諦観をもちつつ、不幸への道を転がっていくようにしか見えませんでした。あからさまには取り上げていませんけど、結局は生きて行く上ではカネが重要なんですよね。そんな身も蓋もないことも思ってしまいます。

 ただ、観客に説明するためとはいえ、明石が父の自殺の原因を知らなかったことはちょっとひっかかりました。また、奈々の家庭に関するエピソードは、物語を盛り上げる一方、ちょっと話をごてごてしすぎた感じもします。それでも、たいした瑕瑾にはなっていませんが。

 阿部、安藤の抑えた感じの演技は逸品ですが、田中の悪役、個性ある窃盗団たち、そして明石の母役の室井滋など、配役は完璧。清原が役名の大野奈々名義で歌う主題歌も、非常に印象に残りました。山田孝之がプロデューサーですが、さすがです。
posted by 映画好きパパ at 07:04 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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