2019年02月26日

半世界

 仕事や家族にほころびが出て、将来に漠然たる不安があるのに、気分はいつまでも若いつもりのアラフォー男たち。アメリカ映画では結構あるけど、日本では意外と少ないこの手のジャンルですが、今作は配役、演技が神がかっており、脚本、撮影にいたるまで丁寧に撮られた、大人のための極上の逸品といえましょう。


 作品情報 2018年日本映画 監督:阪本順治 出演:稲垣吾郎、長谷川博己、渋川清彦 上映時間:119分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズシャンテ 2019年劇場鑑賞54本目



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 【ストーリー】
 三重県の山村で、家業の炭焼き屋を営む高村紘(稲垣吾郎)は、妻の初乃(池脇千鶴)とも倦怠気味。さらに中学生の息子、明(杉田雷麟)がいじめにあっていると妻から相談を受けるが、反抗期の明は紘とろくに話そうとしない。

 ある日、幼なじみで自衛隊に入っていた沖山瑛介(長谷川博己)が、突然、帰郷。廃屋となっていた実家にすみつく。同じく幼なじみの岩井光彦(渋川清彦)を交えて3人で酒を酌み交わすが、瑛介は自衛隊を辞め、妻子と別れており、何か事情があるようだった。

 【感想】
 39歳と人生の半分まできた3人の同級生。若いころは、好きな人と恋に落ちて結婚して幸せになり、仕事もばりばりこなす。そんなことを漠然と考えていたはず。しかし、家庭も仕事も思い通りにならないし、夢どころか日々の雑事に追われてしまう。。そのうえ、厳しい社会では、思いがけない悪いことがひょっこり起きてしまう。そんな戸惑い、悩みを3人の俳優がうまく演じています。特に稲垣は普段のスターオーラが見事に消え、どこにでもいそうな中年男になっているのにうならせました。

 紘の家業の炭作りは、木を切るところから、上質な炭に焼き上げるまでたった一人でしなければならない苛酷な労働です。それでいて、経済的にうまくいっていないのが、会話の節々であらわれます。息子につがせたくないが、仕事や家計のことを子どもにうまくいえない、そんな悩む彼は、田舎の町ではスナックでいつものメンバーと飲むことぐらいしか息抜きはありません。

 そんな彼にとって、久々に戻ってきた瑛介は、生活のよい刺激になるはずでした。ところが瑛介は昔と打って変わって、陰気で人をよせつけないようになっています。さらに、3人のなかのムードメーカーで、いつもへらへらしている光彦も、少し認知症の入った父親(石橋蓮司)の面倒をみながら、これまた家業の中古自動車屋にしばりつけられ、嫁の来てもいません。田舎の閉塞感から抜け出せなかった紘、光彦と世界に飛び出したものの、結局は帰郷せざるをえなかった瑛介。それぞれが自分たちの世界しかしらない、ここでもまた半世界というタイトルの意味が光ります。

 それでいて、決して地味ではなく、中盤の長谷川博己のアクションシーンは目を見張るほどのすばらしさ。長谷川がこんなに切れたアクションをするとは思ってもみませんでした。さらに、瑛介が明にアドバイスする場面も、実の子どもと会えない瑛介と、実の父とコミュニケーションができない明の疑似親子関係にほろっときました。

 主役の稲垣は、脇役としては「13人の刺客」をはじめ見応えある演技をしますが、主役でも堂々の演技力をみせており、アイドルグループの一人ではなく映画俳優として脱皮したといえましょう。池脇との間の、長年連れ添った夫婦ならではの絶妙な間合いは絶品です。

 上映館が少ないですが、人生に疲れた人はぜひ観るべき。出演者のファンも観て損はない作品でした。
posted by 映画好きパパ at 07:29 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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