2019年02月28日

女王陛下のお気に入り

 ギリシアの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督が豪華キャストを迎えた英国版「大奥」。ドロドロとした人間関係に、ランティモス監督ならではのどぎつい描写があり、ニンニクいっぱいの大盛り豚骨醬油ラーメンを食べたあとに似ているかも。

 作品情報 2018年アイルランド、イギリス、アメリカ映画 監督:ヨルゴス・ランティモス 出演:オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ 上映時間:120分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:川崎チネチッタ 2019年劇場鑑賞56本目



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 【ストーリー】
 18世紀初頭のイギリス。アン女王(オリヴィア・コールマン)は暴飲暴食で痛風に悩み、政治にも飽き、気まぐれな行動を繰り返していた。幼い頃からアンを支えてきた女官長のサラ・モールバラ(レイチェル・ワイズ)は、アンの代わりに政治に口を出し、夫のモールバラ公(マーク・ゲイティス)が英国軍の最高司令官を務めていたこともあり、大臣すら恐れる権力を誇っていた。

 サラの従姉妹のアビゲイル・ヒル(エマ・ストーン)は父親がギャンブル狂で破産し、身売りされた先から逃げ出した。行き場のなくなったところをサラに拾われ、彼女の召使いとなる。しかし、野心に燃えるアビゲイルは、アン女王に直接取り入るとともに、サラを嫌っている野党トーリー党の党首ロバート・ハーリー(ニコラス・ホルト)と手を組み、サラを失脚させ自分が女王の寵臣になろうと画策する。

 【感想】
 中世イギリス史は疎いのですが、アンの寵愛をめぐって、サラとアビゲイルが対立したのは事実です。ただし、本作では同性愛の愛人になっていますが、実際はどうだったのでしょうかね。それはさておき、まず豪華絢爛の衣装と、裏腹に陰謀渦巻く宮廷を反映したような、暗めの色彩のフィルム撮影は見事です。

 さらに、今と違って不潔だった時代。ヨルゴス・ランティモスならではの美学としかいえない、アビゲイルが転んで泥だらけになりハエにたかられたり、素っ裸の男にオレンジを投げつける遊びを貴族で楽しんでいたりといった、今の感覚ならうぇ、と思うシーンもでてきます。

 物語に沿って言えば、幼い頃から引っ込み思案で、王族とは言え次女だったアンを守ってきたことを自他共に認めるサラ。大臣ですら女王を恐れているなか、愛人関係でもあり、言いにくいことをずけずけいいます。サラにとって、欠点を欠点と教えてあげることが真の友情と信じていました。しかし、アビゲイルは歯の浮くようなお世辞をいい女王を喜ばせます。そのことに怒るサラでしたが、女王は次第にアビゲイルを気に入っていきます。このへんの人間関係は今にも通じるかもしれません。

 そして、実力行使も伴う2人の険悪な関係。アンは美女2人が自分の歓心を買おうと争う姿はうれしかったのでしょう。容姿も能力も自分が劣っているのに、女王という立場だから、いくらでも好きなことができるのです。アンが闘争を暗にあおることで、事態はどんどん険悪になっていきます。よく考えればアビゲイルのやっていることは、父親に売られカネのために金持ちの慰み者になるか、出世のために年老いた醜い女王の慰み者になるかで、本質的には変わってないのですよね。地位とか富とかいったいなんなのでしょうか。

 そして、女性とは言え大臣を超える実力とあって、政界も真っ二つにわかれます。サラ、アビゲイルとも、並みの男ではかなわない強さ、賢さがあり、男達に利用されるのでなく、相手を倒すために男達を利用しようとします。一番笑えたのが、アビゲイルの新婚のシーン。結婚してレディの位置を手に入れた後は、もう男に利用価値はないと、初夜ですら体を許さない傲慢さ(史実では子どもがいたのですが)。エマ・ストーンのヌードも思いがけない場面でみられてちょっと驚きました。そして、皮肉なラスト。見終わった後、史実を調べたら余計、なんともいえない気分に。

 映画賞レースでも話題になっていますが、3大女優の競演というよりも、3大怪獣世紀の大決戦という趣向で、やはり女は恐いもの、と思ってしまいました。
posted by 映画好きパパ at 07:07 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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