2019年03月26日

ちいさな独裁者

 将校の制服を手に入れた脱走兵が、将校になりすました残虐行為を繰り返した実話の映画化。人間の悪意、権威に弱い愚かさなどいろいろ考えられますが、現代のドイツを将校姿の主人公らがパレードするエンディングロールは一見の価値があります。

 作品情報 2017年ドイツ、フランス、ポーランド映画 監督:ロベルト・シュヴェンケ 出演:マックス・フーバッヒャー、ミラン・ペシェル、フレデリック・ラウ 上映時間:119分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2019年劇場鑑賞82本目 




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 【ストーリー】
 1945年4月、降伏直前のドイツで、逃亡兵のヘロルト(マックス・フーバッヒャー)は、放置された車両のなかで偶然、太尉の制服を見つける。逃亡が見つかったら死刑になるヘロルトは太尉の制服を着たところ、同じく逃亡兵のフライターク(ミラン・ペシェル)から、本物の太尉と勘違いされる。

 太尉になりすましたヘロルトは「特殊部隊H」のリーダーだと書類を偽造。その後も逃亡兵たちを部下に加える。検問も堂々とくぐりぬけたヘロルトは、やがて到着した収容所で、自分の権力を思い切りもてあそぶ…

 【感想】
 自分も逃亡兵なのに、同じ境遇の逃亡兵を処刑しまくったヘロルト。戦後、戦犯として処刑されますが、なぜ逃亡兵を殺害したかについては「自分でもわからない」と答えたそうです。戦争の狂気がもともとヘロルトに内在していた権力欲、残忍性を増幅させたのでしょうけど、それっていつどの時代でも、ほとんどの人に程度の差があれ存在するのではないかと、性悪説にたってみたくなります。

 ヘロルト自身はともかくとして、最初のころは、残虐な行為に嫌悪感を示していたフライタークが、最後のほうではノリノリで荷担しているのをみても、人間なんて所詮、そんなものかと暗い気持ちになってしまいます。まして、逃亡兵を山狩りで殺害していく地元の住民や収容所の看守なんていうのは、本当に平和な時代だったらどこにいてもおかしくない人ばかり。ヘロルトのような悪事は自分からしなくても、いわれればするわけで、これまた良心、人間性の欠如がはなはだしいのですが、現代でも世界中で移民や貧困など弱者に対する迫害が起きているのをみると、やはり普遍的なものかもしれません。

 当時、ヘロルトはわずか21歳でした。しかし、彼の噓に誰も気づかないというのは、軍服のもつ匿名の権威の怖さであり、同時に、上司へ疑問をいえない独裁国家の怖さなんでしょう。
そういう雰囲気が、最近では自由主義の国家にも広がっているのが何ともない不気味さです。エンディングの現代ドイツにヘロルトたちが現れるところはどこまでが演出かわかりませんが、シュヴェンケ監督もそういう危機感をもっているのでしょうね。

 生と死をわけるのはほんの偶然でしかないし、独裁国家なんていうのは本当に滑稽なんだけど、今だからそれはいえるわけです。マックス・フーバッヒャーの最初は、幼い逃亡兵だった風貌が、権力を握ってどんどんどぎつくなる演技も背筋に冷たいものを走らせました。
posted by 映画好きパパ at 07:40 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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