2019年03月27日

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 予告篇をみると、戦後間もない時代に、周囲の偏見にも負けずに夢に向かって頑張る女性のハートフルストーリーと思ってみたのですが、結構、ビターな作品。 イザベル・コイシェ作品ならではの静けさが覆っています。

 作品情報 2018年スペイン、イギリス、ドイツ映画 監督:イザベル・コイシェ 出演:エミリー・モーティマー、ビル・ナイ、パトリシア・クラークソン 上映時間:112分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シネスイッチ銀座 2019年劇場鑑賞83本目



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 【ストーリー】
 1959年、イギリスの海辺の小さな町で、古い空き屋を買い取った未亡人のフローレンス(エミリー・モーティマー)は、亡き夫との夢だった本屋開設に動き出す。これまで町に本屋がなく、本好きのフローレンスとアルバイトの小学生女子クリスティーヌ(オナー・ニーフシー)の接客ぶりは、偏屈な老資産家ブランディッシュ(ビル・ナイ)ら、町の一部の人の心をつかむ。

 だが、町の有力者ガマート夫人(パトリシア・クラークソン)は、空き屋をアートセンターにするつもりだっただけに、フローレンスの存在が面白くない。あの手この手で妨害をはじめ、しだいにフローレンスの本屋の売り上げは落ちていき…

 【感想】
 本は電子書籍やネットショッピングでという人が多い現代では信じられないほど牧歌的ですが、今から何十年前は町の小さな本屋さんが、その町の文化の象徴だった時代があったのです。本好きのフローレンスが選ぶ本は、ブランディッシュら町の読者達を歓ばせます。レイ・ブラッドベリやナボコフといった響きが、当時は格別に文化の香りとともに聞こえたことは想像にかたくありません。

 そんな書店は経済的にくるしく、不動産屋や銀行の貸し付け係と何度も交渉しながら店を続けようとするフローレンスの姿は、健気であり好きなもののために一身をなげうつ勇気を感じてしまいます。劇中登場するブラッドベリの「華氏451」は焚書と表現の自由を描いたSFであり、半世紀前に映画化された「華氏451」のヒロイン、ジュリー・クリスティが本作のナレーションを担当しているというのも、本を愛することの大切さと勇気への思いが捧げられているのでしょう。電子化とはまた違った、長年の歴史があるという重みがなんともいえません。

 一方、ガマート夫人も上流階級のたしなみとして芸術愛好家を自認しています。しかし、アートセンターに本屋の古い建物がふさわしいとはとても思えず、自分の思い通りにならない知識が、一般大衆に広がることへの嫌悪感と、町の文化人としての高すぎるプライドがフローレンスに意地悪するようになった理由しかみえません。さらに狭い町では、ガマート夫人に立ち向かうことは、狭いムラ社会から浮いてしまいます。美しい風景と裏腹の閉鎖的で嫌なムラ社会。このへんの人間関係は日本もイギリスも変わりないよなあ。

 正直、前半は非常に平板で客席からはいびきも聞こえたのですが、物語を動かしてくれるのは賢くてどんなときもフローレンスの味方のクリスティーヌと、非常にヌエ的な、メフィストフェレスのような存在のBBC社員マイロ(ジェームス・ランス)です。純真で正しいことや勇気にあこがれる少女と、頭はいいけど冷笑的な文化人との違いといったところでしょうか。そこへ、いかにも知的な英国紳士をビル・ナイが好演して、後半は話が展開していきます。

 といっても、終盤まで話は行きつ戻りつしていたのですが、残りわずか10分程度になって、いきなり話が進み、観ているこちらの想像を超えたような展開になっていきます。まあ冷静に考えたらしごくリアルなんでしょうけど、それでも、コイシェ監督のこの映画に対する思いの深さがよくわかります。やっぱり本をじっくり読むと言うことは、人間にとって重要なことなんですよねえ。
posted by 映画好きパパ at 07:44 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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