2019年04月16日

バイス

 ブッシュ政権の実力者で、イラク戦争の黒幕といわれるディック・チェイニー副大統領の伝記映画。「マネー・ショート」の制作陣だけあり、難しくならないようテンポよく話はすすみます。エンドロール途中のおまけ映像こそ、本作のキモなのでお見逃し無く。

 作品情報 2018年アメリカ映画 監督:アダム・マッケイ 出演:クリスチャン・ベイル、エイミー・アダムス、スティーヴ・カレル 上映時間:132分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ川崎 2019年劇場鑑賞99本目




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 【ストーリー】
 1960年代、飲酒と喧嘩で大学を中退したディック・チェイニー(クリスチャン・ベイル)は婚約者のリン(エイミー・アダムス)の叱咤で、出世を目指す。ワシントンでインターンとなったディックは、共和党の若手議員ラムズフェルド(スティーヴ・カレル)と意気投合。彼を支えながら政界で立身出世をしていき、国防長官にまでなる。だが、娘のメアリ(アリソン・ピル)が同性愛者だったことと、心臓に持病があることから大統領選出馬は断念。政界から実業界に転身する。

 2000年の大統領選で共和党候補のブッシュ(サム・ロックウェル)は、ディックを副大統領にしようとする。お飾りの副大統領に興味の無かった彼は、内政、外交、軍事すべてを担当すると提案。第46代副大統領に就任する。やがて、9.11テロが起きたとき、ディックはそれをチャンスととらえて…

 【感想】
 権力にしか興味が無く、内政も軍事もすべて自分の利益にしようとする人間が世界最強の国歌の最大権力者というのはブラックジョークでしかないけれど、事実その通りだからしかたありません。大まじめにチェイニーを糾弾するよりも、本作のポップな手法のほうがはるかに真実をついているのではないでしょうか。

 もともとダメ白人だったチェイニーの尻を叩いたのが妻のリン。彼女は猛烈な野心をもっていたのに、女性だから出世できないため、夫に代わりをたくすというのは、60年代アメリカらしい。そして、ディックも人を陥れ、自分の権力を増やすことが最大の関心事なわけです。

 アメリカの政界で権力を握り、巨大企業ハリバートンのCEOとして自社にも自分にも巨額の利益を上げるためには戦争すら当たり前。イラク戦争をでっちあげて利権を得たけれど、それがIS(イスラム国)の原因になったというのはあきれはててしまいます。でも、そのために何十万人という人が犠牲になったのだから、現実はなんとおぞましいことか。僕は死後の世界を信じていないけど、神様や地獄が存在して、こういう連中を罰してくれたらどんなにいいでしょうね。

 ただ、この映画がよくできているのは、権力の亡者である一方、同性愛者であるメアリーを愛する父親という側面も描いていることです。母親のリンは、娘が同性愛者だとばれると選挙で不利になるという白い目を向けますが、ディックは娘のあるがままをうけいれ、大統領の椅子すら捨て去ってしまいます。逆にその経験があったゆえ、副大統領としてもいつ何が起きても平気だったのでしょう。権力を握るとはどういうことかを観客に教えてくれます。こういう作品をみると、日本の政界というのは何て呑気なのかと、日本に生まれてよかったとしみじみ思わせてくれます。

 クリスチャン・ベールやスティーヴ・カレルは本物そっくりのメイクをしており、ハリウッド最近の伝記映画の特徴ですね。それがコスプレにみれないというのはひとえに演技力のたまものなのでしょうけど、それほどメイクをしていないエイミー・アダムスも彼女にしては珍しい権力に紛れた恐ろしい女性を熱演しており、見応えがありました。また、チェイニーの映った後に空襲を怖がるイラクの幼い子どもをカットバックで撮したり、演出にも工夫をこらしています。個人的には今年のアカデミー作品賞候補のなかでは本作が一番面白かったなあ。
posted by 映画好きパパ at 07:29 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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