2019年04月19日

芳華〜Youth

 文革期に人民解放軍文芸工作団に入団した一人の少女を軸に激動する社会に翻弄された若者たちを描きました。青春の美しさ、切なさ、残酷さを余すことなくとらえた傑作です。

 作品情報 2017年中国映画 監督:フォン・シャオガン 出演:ホアン・シュエン、ミャオ・ミャオ、チョン・チューシー 上映時間:135分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2019年劇場鑑賞102本目 



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 【ストーリー】
 1976年、歌劇で教宣活動をする中国人民解放軍の文化工作団に、17歳の少女何小萍(ミャオ・ミャオ)が入団した。歌や踊りの厳しい練習が続くなか、彼女の人を信じない態度や汗臭さから、いじめの対象になってしまう。そんななか、だれもが模範兵と認める劉峰(ホアン・シュエン)だけが、彼女に優しく接する。劉峰に淡い恋心を抱く小萍だったが、彼は歌劇団の人気歌手、林丁丁(ヤン・ツァイユー)のことが好きだった。

 やがて中越戦争が始まり、ある事情から歌劇団から異動となった劉峰は最前線に、小萍も従軍看護婦として、前線の野戦病院に配属される。そこは若者達が想像もしなかった激戦だった。苛酷な運命に翻弄される2人は…

 【感想】
 前半は甘く切ない青春群像劇。みずみずしい感性をもった男女が、将来の夢を持ちながら、音楽の練習に打ち込み、美男美女ぞろいということで、恋に発展することもあります。しかし、共産圏中国ということで、日本では考えられないこともありました。幹部の子弟は優遇されますが、小萍の実父は反党分子として逮捕されており、彼女は幼い頃から周囲にいじめられていました。ダンスの才能を見出されて文工団に入団した彼女ですが、貧しい田舎者で、凍てついた心は周囲に溶け込めず、またもやいじめられてしまいます。

 歌劇団の演目はみごとなものですが、伝統的な中国共産党の音楽で、すでに時代遅れともいえました。劇中、禁じられているテレサ・テンのカセットを何人が聞いて衝撃を受ける場面もありましたが、それは彼ら自身にもわかっていたのでしょう。しかし、自分たちの激しい練習の成果の自負と、前線の兵士を鼓舞する役割に誇りを持っています。将来の夢といっても何とも複雑な事情が彼らにはあるわけです。

 やがて、中越戦争がはじまり、プライベートライアンを彷彿とさせるような激しい戦闘シーン。長回しで劉峰の後を追うカメラワークは、爆弾が直撃して文字通りからだが四散するような残虐な場面がつづきます。小萍も白衣を血だらけにしながら、若い兵隊の死に水をとります。検閲のある中国映画でよく、こんな戦争の悲惨さを訴える作品が公開できたと感心するほど。

 映画はそこで終わらず、改革開放路線のなか、軍縮で文工団も解散となります。その解散の宴が何とも切なくて、胸に来ます。僕はこういう場面が大好きなので、近い将来、自分もそういう場にめぐりあえないかなと、ひそかに思ったほど。そこへ、ある重要キャラクターの、まさに幻想的な踊りもあり、青春の終わりの残酷なまでの美しさに体が震えました。

 さらに、その後現在に至るまで、何人かのエピソードが点在していきます。老残といういいかたはおおげさですが、青春が輝かしいほど、中高年のリアルな現実との落差が激しい。エリートだった文工団のメンバーも、ものすごい経済格差の波にのまれていきます。そんななか、最後までも大切な何かについて、ちゃんと考えさせるストーリーはすごい。

 エンディングロールでは、彼らの青春の日々が再び流れます。もう、自分の感情がはちきれるかとおもうぐらい、胸にこみあげるものがありました。たとえ現在が不幸でも、あれだけ輝かしい青春があればそれでいいのではないかと。

 また、フォン・シャオガン監督のカメラワークがすさまじく、青春シーンでは、男女のぴちぴちとした色気をフェチずむっぽくとり、戦争シーンはひたすら激しく、終盤、人生の晩年ではすっかり落ち着く。BGMも頭に残り、映像、ストーリー、演技、音楽すべて見ている者の心を揺さぶる傑作でした。
posted by 映画好きパパ at 07:18 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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