2019年04月30日

ある少年の告白

 いまだにアメリカにゲイを矯正させる収容所があるというのは驚きましたが、父と息子、母と息子、そして父と母の物語として、自分と重ねてみてしまいました。静かですが考えさせる力作です。

 作品情報 2018年アメリカ映画 監督:ジョエル・エドガートン 出演:ルーカス・ヘッジズ、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウ 上映時間:115分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:新宿シネカリテ 2019年劇場鑑賞113本目



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 【ストーリー】  
 大学生のジャレット(ルーカス・ヘッジズ)は、学校で起きたある出来事から、自分が同性愛者であることを父のマーシャル(ラッセル・クロウ)と母のナンシー(ニコール・キッドマン)に告白する。南部の田舎町の牧師であるマーシャルにとって、同性愛とは神の御心に反する悪魔か病気の仕業だった。

 マーシャルに命じられ、同性愛者の矯正施設に入ることになったジャレット。そこはサイクス所長(ジョエル・エドガートン)が、同性愛者を悪と決めつけ、半ば暴力的にたたきなおそうとする恐ろしい施設だった。ジャレットは施設を出たいと両親に訴えるのだが…

 【感想】
 最初は時代設定が昔かと思っていたら、携帯電話やゲーム機などをみると、今世紀にはいってからの話。それなのに、同性愛が悪魔の仕業だと真剣に考える施設がアメリカにはたくさんあって、今も何十万人も入所しているというのに驚きました。普段、目につくニューヨークや西海岸と、南部の田舎ではやはり別世界なんですね。

 施設での矯正のしかたは、戸塚ヨットスクールと日本でも昔あったスパルタでなおすとうそぶいていた施設をふと思い出しました。しかし、アメリカでは神が絶対視されているわけですから、ある意味、それ以上に狂信的です。うまく異性愛者のふりをすれば、厳しい罰則はないのだけど、一番、ショックだったのが、入居していた少年が同性愛についての反省が見られないとして家族が呼ばれて、施設職員と一緒に、むち打ち(むちではなく、教典か何かの本でしたが)させられていたことです。まだ幼い少女が、半泣きになりながら兄を本気でたたかなければならない。こういう狂信的な部分が残っているアメリカの怖さと、善良なはずの彼らに残るトラウマを想像するとぞっとしました。

 マーシャルはそこまで狂信的ではなく、息子のことを彼なりに愛しています。しかし、同性愛者に対してどう接すればよいか分からず、自分の常識にそってしまい息子にむごいことをしました。前半の威厳があって高圧的なマーシャルが、終盤、すっかり弱り果てたのをみると、宗教や時代にあわないことが、ここまで恐ろしいのかと思わせてしまいます。これはどんな親子でもおそらくあることで、自分も将来、娘が僕とは違った考えになったときにどういう態度を取るのだろう、と考えてしまいました。

 一方、ナンシーはそこまで高圧的ではなく、むしろ、父との盾になろうとします。それでも、南部の女性らしく、最初は夫に従って、息子を施設に入れることを手伝いました。そのことが彼女を苦しめますけど、女性の自立というのも、背景に描いており、アメリカ社会の病巣のようなものを感じました。

 ラッセル・クロウ、ニコール・キッドマンという大スターに、ルーカス・ヘッジズが最初は頼りなく、やがて自立していく青年をみせて、演技合戦は見応えがあります。ヘッジズは「マンチェスター・バイ・ザ・シー」「スリー・ビルボード」、そして本作と順調にキャリアを重ね、ハリウッドの若手スターのなかでもトップクラスの存在感をみせました。監督も勤めるジョエル・エルガートンがなにげにおいしい悪役をしているのも見逃せません。
posted by 映画好きパパ at 07:15 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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