2019年05月20日

主戦場

 従軍慰安婦という重いテーマを扱うノンフィクションながら、善玉悪玉をはっきりさせて、軽快なテンポでエンタメのようにみせるミキ・デザキ監督の手腕はお見事です。ただ、終盤は思い切り反安倍、反米の主張がでてしまい、プロパガンダ映画とみえてしまいましたが。

 作品情報 2018年アメリカ映画 監督:ミキ・デザキ 上映時間:122分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シアターイメージフォーラム 2019年劇場鑑賞132本目 



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 【ストーリー、感想】
 日韓関係の大きな障害となっている従軍慰安婦問題。僕も意に反してひどいめにあった女性たちがいたことへの怒りや悲しみを感じます。しかし、では日本政府による強制連行はあったのか。日系米国人のデザキ監督は右派、左派の論客に聞いて、争点を一つ一つ検証していきます。桜井よしこ、杉田水脈、ケント・ギルバードの各氏といったメディアのおなじみの右派の顔ぶれに、慰安婦研究の専門家の吉見義明・中央大名誉教授や韓国の研究者、元慰安婦の家族らが反論。ニュース映像もふんだんに使っており、この問題に詳しくなくても最後まで飽きずにみられます。

 ただ、登場する右派が実際にも問題発言をしている人が多いのですが、映画ではそこをクローズアップ。女性にたいする性差別的発言はもちろん、「日本人はうそつきが少ない」(いや詐欺事件や大企業の不正をみればうそつきは多いだろう)とか「中国、韓国の技術は日本にかなわない」(何十年前のことだ)とか、発言には僕も内心突っ込み、失笑することが多かったです。

 その右派の発言を左派の専門家が否定するというパターンが多いのですが、常識的な論点は左派の専門家が言っていることはまさに正論なのだけど、肝心な争点については具体的な証拠がなく、自分が思っているということが多い。日本国が組織だって慰安婦を強制連行したり、慰安所を運営したかについては、証拠を示す文書はなく、むしろ米軍の資料では否定している部分もある。これに対して左派の専門家達は、証拠は全部焼かれたとか、悪魔の証明に持ち込みます。また、元従軍慰安婦の証言が矛盾していることについても、「確かめることは二重の加害につながる」と証言をそのまま鵜呑みにするようにという立場の人もいます。さらに、右派は専門家がでてこず、本来だったら左派の吉見名誉教授に対して右派の専門家である秦郁彦・元日大教授を登場させるべきなのに、学問的な論争が成り立っていないのですね。結局、0か100かの議論ばかりを紹介しているだけで、真相追及(おそらくその真ん中にある)にはほど遠いイメージを受けました。

 さらに、次第に安倍批判を強めるのですが、「朝日新聞が従軍慰安婦報道で謝罪したのは安倍政権の圧力」など、僕からすればびっくりするような話が、事実として説明されます。テンポが早いため、あれっと思ったときには次の話にうつっているのですが、モリカケであれほど忖度が問題になったのに、直接的に安倍政権が朝日新聞に圧力をかけていたら、それこそ朝日新聞が鬼の首を取ったように報道するだろうに、何のソースもないことがなぜ流れるのかと不思議に思いました。

 そして、右派のラスボスとして登場するのが加瀬英明・日本会議東京支部長ですが、日本を再軍備化させようとする黒幕としては、失礼ながら実際の影響力があるとはとても思えません。日本会議の陰謀のせいにするというのは左派の間ではやっていますが、個人的にはだれかの陰謀論ですませようとするのは、眉につばをつけてしまいます。

 上映後、会場から拍手が起こっていました。映画そのものは楽しめましたし、慰安婦問題をはじめ戦争責任については風化、美化されないように語り継ぐことは重要なので、多くの人に見てもらいたい作品ではあります。
posted by 映画好きパパ at 07:09 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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