作品情報 2018年日本映画 監督:石井裕也 出演:細田佳央太、関水渚、松嶋菜々子 上映時間:120分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ川崎 2019年劇場鑑賞159本目
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【ストーリー】
高校生の町田一(細田佳央太)は勉強もスポーツもできないけれど、善意の塊のような人物。世界中の人すべてが家族のように思え、困った人がいたら助けずにはいられなかった。
けがをして保健室にいった町田は、不登校のクラスメイト関水渚(猪原奈々)に出会う。「人間が嫌い」という渚に興味を持つ町田くん。一方、渚のほうも善意の塊で、人間が大好きな町田のことが気になりはじめたのだが…
【感想】
人を好きになるってどういうこと?家族を好きになることと異性を好きになることはどう違うの? 言葉にするのは難しく、体験しなければ分からない疑問ですが、全人類ではなくたった一人の人を好きになったことの戸惑い、すなわち初恋というもののもどかしさ、まっすぐさを町田くんはよく表してくれます。
一方、育ってきた環境から人間不信の渚も、町田くんと出会うことでもう一度人間を信じようと思い、それでいて、町田くんの純粋すぎる行動、困った人がいたらだれでも助ける行動に、自分だけみてほしいという思いと、そんな自分がワガママだとの自己嫌悪がまじり、どうしたらよいか分からなくなります。この2人の関係がとにかくなんともいえずにほほえましい。
周囲も中学の時にいじめられてうまく人とつきあえなくなった西野(太賀)、イケモンモデルで学校ではちやほやされているがゆえに何もかも醒めている氷室(岩田剛典)、人を好きになる気持ちが分からずにただ男にこびればいいと思うさくら(高畑充希)、常に一歩ひいたところからみて当事者にならず批評ばかりしている栄(前田敦子)、さらに、好きでもないスキャンダル取材をやらされ人間は悪意の塊だと思っている雑誌記者の吉高(池松壮亮)と、多くの人がどこかに抱えている欠点をデフォルメしたような登場人物が多数でてきます。
その登場人物達が、善意と情熱の塊である町田と出会うことで、失った大切なものを取り戻せ、人間として成長していきます。主役2人のラブラブで閉じ込めるのではなく、世界は多くの人のつながりで成り立っていることを教えてくれるのです。町田の両親役の北村有起哉と松嶋菜々子も、ああ、この両親なら町田くんのようなおおらかな子どもが生まれると納得できる接し方。育児にもさんこうになりそうな感じです。
終盤、物語は一気に加速して、ちょっと寓話的な感じになります。僕自身はこういう展開は大好きなのですが、それが受け入れられない人も多いのか、興行的にはかなり苦戦しています。しかし、主役2人のフレッシュな演技に加えて、前田敦子の的確なつっこみがたまらなく魅力的。本当に町田くんのような人が周囲にいたら、世の中どんなに変わるだろうと思わせてくれました。つらい事件が多い今の世の中だから、こういう作品は必要です。
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