2019年07月19日

ワイルドライフ

 幸せな一家がちょっとした行き違いから崩壊していく様子を14歳の少年の目で描いた傑作。こういう避けられない破滅に直面した人の哀しさを淡々と描く作品って、いろいろ考えさせられ、切なくて好みです。

 作品情報 2018年アメリカ映画 監督:ポール・ダノ 出演:キャリー・マリガン、エド・オクセンボールド、ジェイク・ギレンホール 上映時105分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:恵比寿ガーデンシネマ 2019年劇場鑑賞202本目  



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 【ストーリー】
 1960年代、14歳のジョー(エド・オクセンボールド)は父ジェリー(ジェイク・ギレンホール)の仕事の都合で、モンタナの田舎町に引っ越してきた。ゴルフのレッスンプロをしているジェリーはジョーにスポーツを教え、母のジャネット(キャリー・マリガン)も元教員だったことがあり、ジョーに勉強を教えていた。豊かではないが仲の良い両親をジョーは大好きだった。

 ところが、ささいなトラブルでジェリーが勤務先のゴルフ場をクビになってしまう。しかし、田舎町ではなかなか次の仕事はみつからず、ジェリーはジャネットの反対を押し切り、消防団に入団する。それは安い賃金で山火事消火のため辺境の地へ行き、何ヶ月も家に帰れない苛酷な仕事だった。留守の間の生活のためジャネットも働きに出る。ある日、早めに帰宅したジョーはジャネットが勤務先の上司だというミラー(ビル・キャンプ)と自宅で親密にしているのを見て不安になる。

 【感想】
 貧しくても家族が愛し合えばそれで満足、なんてきれいごとが世の中では通用しないというシビアな現実を突きつけてくれます。ジェリーも世渡りがうまければ、またゴルフ場と考証して復帰できたでしょう。しかし、プライドが高いためそうしたことはせず、かといって、安い仕事では満足できない。ゴルファーという他人とは違う職業についているため、余計、安っぽい仕事にはつけないのです。

 一方、ジャネットも夫を愛していたけれど、霞を食べては生きていけない。不機嫌でろくに職探しのしない夫にだんだんイライラは募るし、子供を守らなければという母親の本能も強くなります。さらに一緒に寄り添って、互いの不満をうちあけてればまだしも、ジャネットの反対を押し切って消防団に入団したため、何ヶ月も連絡がほとんどとれなくなる。ジャネットの不安はどんどん広がり、そこへ小金持ちで女たらしのミラーが入り込んでしまいました。

 ジェリーもジャネットも平穏なときは家族を思いやる余裕があったけど、切羽詰まると自分のことしか考えられなくなります。ジャネットがミラーとどんどん親密になっていくのを、母子家庭では子供から隠し通せません。父親も母親もどちらも大好きだったジョーにとって、あまりにも残酷な毎日が続きます。ここで、ジョーに感情の爆発をさせずに、ただただ、不安とだんだん諦めの表情をさせていく演出が渋い。14歳なら男女が何をするか分かります。一方、親を動かすことができないまだ子供であるわけですから、ただただ家族が崩壊していくのをなすすべなく見ていくしかありません。

 終盤、ジョーがある行動を起こすのですが、それが本当に切羽詰まっていて、14歳の子供にこんなことをさせる両親に対して怒りがわいてきます。でも、両親それぞれ生きるのに精一杯なので、責めきれることもできず、みているこちらとしてもとにかくやるせない気持ちにさせられます。また、離婚など当たり前の現代と違って1960年代の田舎町が舞台というのも、ジョーのつらさを加速させます。

 キャリー・マリガンの愛情と不安に揺れる女心の表現は、これまで若い女性役の多かった彼女が、大人の女性を見事演じられるだけ成長したとうならされるものでした。マッドな役柄の多いジェイク・ギレンホールも、ちっぽけなプライドのために家族を崩壊させる小さな男という新しいイメージをだしました。しかしなんと言ってもエド・オクセンボールドの繊細な演技。両親が喧嘩しているときに不安で哀しそうな表情だけで見せる芝居や、同級生と一緒にいるときやアルバイト先のカメラ店での少年らしい表情など、ほんとうにジョーという少年がその場にいるようにみせてくれました。モンタナの苛酷な自然も併せて、良いアメリカ映画をみたという気持ちでいっぱいにさせられます。
posted by 映画好きパパ at 05:41 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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