作品情報 2019年日本映画 監督:山崎貴 出演:菅田将暉、舘ひろし、田中泯 上映時間130分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:横浜ムービル 2019年劇場鑑賞229本目
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【ストーリー】
昭和8年、日本海軍は新型軍艦の建造を巡って2つに割れていた。航空戦力の充実を訴える山本五十六(舘ひろし)は空母建造を主張。一方、海軍主流派の嶋田繁太郎(橋爪功)は、軍艦造船のドンとも言える平山忠道(田中泯)の設計した巨大戦艦案を出していた。
巨大戦艦が建造されれば、日本の軍備を過信した軍部が米英との戦争に突っ走ると懸念した山本は、建造費が不自然に安いことに着目。平山たちが不正を行っているのではと疑う。しかし、不正を証明するには、決定までの短期間に自分たちで見積もりをださなければならなかった。山本はたまたま出会った、100年に1度の数学の天才という青年、櫂直(菅田将暉)の能力に目を付け、彼に新型戦艦の建造費算出を命じる。
【感想】
日本でもトップクラスのヒットメイカーの山崎貴監督ですが、エモ−ショルな感情を観客に押しつけるところもあるし、売り物のVFXもハリウッドに比べたら予算もあって劣る物ですから、今一つ評価していませんでした。しかし、本作は無理な感情の押しつけはせず、数学を武器にするという頭脳戦で魅力的な作品に仕上げています。
コンピューターどころか電卓もない時代。海軍主流派から妨害されて資料は皆無。部下も数学の素人の田中(柄本佑)1人だけ。文字通り徒手空拳で巨大なプロジェクトを仕上げなければならないというのは、現代のビジネスマンからみてもワクワクするところが多いでしょう。櫂の数学オタクぶりにニヤニヤさせつつ、情報入手のためのスパイ大作戦的な活躍もあり、最後まで楽しめます。
構成がうまいのは、戦艦大和が完成したのは後世の我々はしっています。それに至るまでどんな秘話があったのか、結果をしっているのに楽しませてくれるのです。冒頭に予告編で流れている大和が米軍機の来襲で沈没するシーンをたっぷりみせて、いったい主人公である櫂はどうなったのかという興味を最後まで引きずらせます。最初は軍人嫌いで協力を断った櫂の思い。仕事をはじめたら文字通り命がけでのめり込む心情。そして、クライマックスのたたみかける展開。これが実にうまい。
脇役の造詣もうまい。軍人である以上勝つことを考える山本、海軍の伝統を守ろうとする嶋田。そして、理系でありだれよりも先を見据えている平山。それぞれが自分の理念のために櫂とぶつかりあいます。さらに、物語に花を添えるのが櫂が家庭教師として教えていた財閥令嬢の尾崎鏡子(浜辺美波)。彼女との関係で書生先の財閥を追い出され帝大もやめることになった櫂がとの関係を、うまく物語に絡めています。
日本の戦争映画というと単純な反戦映画か、逆に泣かせる愛国映画かになりがちなのですが、どちらでもなく、それでいて、静かな感動を呼び起こさせる。山崎監督のこれまでの仕事のなかでも最もよくできた作品ではないでしょうか。難しいことを考えなくても、軍服姿の菅田のりりしさと、いかにも昭和の令嬢といった浜辺の可憐さをスクリーンで観られるだけでも眼福の作品でした。
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