2019年08月31日

トム・オブ・フィンランド

 ゲイを描いた絵で、初めて世界的なヒットメイカーになったトム・オブ・フィンランドの伝記映画。脚本が緻密で、故国で迫害を受けつつ、世界中のゲイに希望を与えた彼の人生がよくわかりました。

 作品情報 2017年フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ドイツ映画 監督:ドメ・カルコスキ 出演:ペッカ・ストラング、ラウリ・ティルカネン、ジェシカ・グラボウスキー 上映時間116分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ渋谷 2019年劇場鑑賞255本目 




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 【ストーリー】
 第二次大戦に従軍したフィンランドの青年トウコ・ラークソネン(ペッカ・ストラング)は、戦地でゲイの相手をみつけたものの、終戦後は決まったパートナーがいなかった。さらに、当時、同性愛は違法で見つかれば警察に逮捕される。

 そんななか、トウコと妹のカイヤ(ジェシカ・グラボウスキー)の住む家に、美しい下宿人ヴェリ(ラウリ・ティルカネン)が引っ越してくる。カイヤは彼に引かれるが、実は同性愛者だったヴェリは、トウコと愛の巣を作る。一方、芸術家になりたい夢を捨てきれないトウコは、ゲイのイラストを作るが国内では発表にできない。そこで、アメリカの雑誌に投稿したところ、大絶賛され…

 【感想】
 ゲイカルチャーに詳しくなかったのですが、トウコではアメリカ人に読めないと思ったため、トム・オブ・フィンランドと名付けたところ、世界中のゲイカルチャーを揺り動かすほどの作品を次々に発表することになったのでした。フィンランドでは警察の目を盗んで深夜の公園で相手を探し、ゲイのパーティーに警察が踏み込んできて急いで逃げ出したこともあるなど、ゲイは迫害されていました。

 さらに、家族にも理解されません。とくにトウコの場合は、妹が憧れていることを知りつつ、ヴェリを自分の恋人にしてしまったわけですから。全体的に抑制的で重いタッチの作品で、あまり大騒ぎした描写はありませんが、それだけに3人の心の動きだけでも1本の映画になりそうな、緊迫した感じです。

 本作ではさらにトウコの内面を描こうと、戦争時代のくるしい体験もトウコの深層心理に反映されていることを示す描写が繰り返し描かれます。戦争のときは命の危険を感じ、終わってからも家族、社会、国家どこにも居場所のないトウコの鬱屈さ。ヴェリの存在で幾分救われたとはいえ、今では考えられないような重苦しさです。

 一方、アメリカの西海岸はヨーロッパほど厳しくなく、ゲイコミュニティーもできていました。しかし、そんなアメリカのゲイたちを勇気づけたのが、抑圧されたトウコの制作した作品群というのも不思議なもの。アメリカで大歓迎されたトウコは、いかほどな気分だったのか、それまでの延々と重苦しい雰囲気が一気に晴れるようでした。

 そんなアメリカでもまだ、ゲイへの偏見は残っていました。世界中に楽園がないなか、どんな時でも自分らしく生きようと、トウコの前へ少しでも進もうという姿は、観客に静かな感動を与えてくれるでしょう。
posted by 映画好きパパ at 09:27 | Comment(1) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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■当サイト情報〜〜〜〜〜
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サイト管理人:富樫
サイト:https://hidekisaijo-kiseki.com/
メール:suzume35193@gmail.com
Posted by 管理人 富樫 at 2019年08月31日 10:23
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