2019年09月02日

ドッグマン


 支配されるものと支配するもの。優しくても力がなくては生きていけない、そんな不条理を描いたイタリア映画。カンヌ主演男優賞を得たマルチェロ・フォンテのいらっとする演技が何とも癖になります。

 作品情報 2018年イタリア、フランス映画 監督:マッテオ・ガローネ 出演:マルチェロ・フォンテ、エドアルド・ペッシェ、アリダ・カラブリア 上映時間103分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ渋谷 2019年劇場鑑賞257本目



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 【ストーリー】
 イタリアの小さな町で犬の美容サロンを開いているマルチェロ(マルチェロ・フォンテ) 。小心だが犬が大好きで腕も良い彼の店は繁盛しており、別れた妻のところにいる幼い娘アリダ(アリダ・カラブリア)が時々、遊びに来るのが何よりも楽しみだった。

  だが、彼には大きな悩みがあった。地元の粗暴な男シモーネ(エドアルド・ペッシェ)のパシリとなり、麻薬や泥棒の手伝いなどをさせられていたのだ。断ってもシモーネが恐くて結果的に引き受けてしまうマルチェロ。ある日、シモーネがとんでもない犯罪を手伝うように命令してきて…

 【感想】
 ドラえもんのいない世界のび太が、大人になってもジャイアンに支配されているというイメージでしょうか。もっとも、粗暴では根は気のいいジャイアンと違い、シモーネはサイコパスともいえる犯罪者であり、遣っている悪事は桁違いなのですが。

 マルチェロも毅然と断ればいいのに、それができない。警察に相談したくても後難を恐れてしまう。イタリアの寂れた田舎町という閉鎖性が、余計、シモーネを好き勝手にしています。しかし、共依存ともいうべきところもあり、シモーネが大けがをしたときに、マルチェロは必死になってたすけます。力のない自分が、暴れん坊のシモーネから「お前は友達だから」と言われるのをすがるように。

 ずるずると犯罪に巻き込まれるマルチェロの様子は、ある種、滑稽さもあります。本人は犬好きで、娘と旅行にいくことだけを楽しみにしている小市民なのに、そんなちっぽけな世界は暴力の前には何の役にも立たないのです。ここまでひどくなくても、こういう暴力に怯えることっていうのは、日本ではあるのかもしれません。その場合、どうすれば良いのか。マルチェロの対策も端から見れば愚かしいのですけど、本人は必死で気づかないのですよね。哀れで愚かなマルチェロの様子は、シモーネという暴力の権化とうまく対比されています。

 マッテオ・ガローネ監督の容赦のない描写は、陽光きらめく浜辺の町なのに、くすんだマルチェロの心理が反映している不気味さを感じさせます。唯一といっていいのが、アリダが純粋に父親のことを大好きなことなんですけど、こんな幸せを守ることすら難しい。でも、もしほんの一歩踏み出す勇気があれば、また、違ったのかもしれないけれど、やはり暴力の前では人間は思考停止してしまうのですよね。ドッグマンにどこでだれがなっても不思議ではないといえましょう。

 マルチェロ・フォンテは無名ながら、本作で数々の受賞を果たしたのも納得の繊細な演技。小柄でおどおどしたちょっとした仕草や、不安そうな目のぎょろつき、犬への頭のなで方から、マルチェロが本当に実在するように思えます。一方、増量して撮影に臨んだというエドアルド・ペッシェの粗暴ぶりもすさまじい。マルチェロの行動に突っ込みたくなるところもありますが、この2人の見応えのある演技合戦に、ついつい見入ってしまいました。
posted by 映画好きパパ at 07:00 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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