2019年09月05日

アートのお値段

 現代アートにはまったく素人ですが、100億円を超える作品もでてくるほどバブルな状態にどうしてなったのか。その世界の大物に次々とインタビューしたドキュメンタリー。非常に面白い証言が次々でてきて、アートに関心なくても資産形成や社会格差に興味がある人には十分楽しめる作品です。

  作品情報 2018年アメリカ映画 監督:ナサニエル・カーン 上映時間98分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:渋谷ユーロスペース 2019年劇場鑑賞260本目



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 【ストーリー、感想】
 500億ドルを超える市場といわれる現代アートですが、1970年代に初めてその価値が認識され、90年代になって爆発的に市場が広がりました。それまで、名画といえばゴッホ、ルノワールといった名画が中心ですが、市場にでてくる数に限りがあります。しかし、現代アートなら、作者がどんどん新しい作品を作るわけですから、いくらでも市場が広がります。さらに、中国、中東といった地域にも大富豪がどんどん誕生して、市場にカネがものすごい勢いで流れ込みました。

 例えば、1970年代に数万ドルで買えた、現存する作家では人気ナンバーワンのジェフ・クーンズの作品は、人気のものでは90年代には90万ドル、そして映画撮影時には6500万ドル、そして今年には9000万ドルと値段が跳ね上がっています。50年たたないうちに1000倍以上に値上がりするのだから、美術品愛好家でなくても大金持ちが投資対象にするのはよくわかります。

 さらに、美術品そのものが通貨として流通しています。例えば100万ドルの作品を50万ドルの作品2つと交換する場合、アメリカでは税金はかからないそうです。こうしたことから、現代の錬金術ともいうべき現代アートの社会ができあがりました。

 この作品では積極的に商業化の波に乗っているクーンズへのインタビューのほか、70年代には人気絶頂だったのに「カネと芸術の価値は関係ない」といって流行の作品を手がけるのを拒否して田舎に隠棲したラリー・プーンズや、「自分の作品は金持ちにも貧しい人にも平等に美術館でみてほしい」と願うドイツを代表する現代作家のゲルハルト・リヒターにもインタビュー。さらに、自分の絵の値段が100万ドルになったことを知って目を白黒させるナイジェリア人作家のジデカ・アクーニーリ・クロスビーといった、美術界の最先端の人たちにもインタビュー。

 その一方で、ササビーズの責任者がリヒターの発言を聞いて「美術館は墓場」と言いきったり、ニューヨークの画商が、プーンズの作品は割安だからこれから高値になると買いあさったりと、アーティストとは別の商業主義のリアリズムも描いています。ササビーズのオークションの舞台裏にも密着しており、またたくうちに値段が跳ね上がる様子は思わず興奮してしまいました。

 著名なコレクターにも何人にもインタビューしていますが、一番、興味深かったのは自宅にクーンズをはじめとする超人気作品がごろごろしているステファン・エドリスの話。美術品に一家言持ち、美術界のパトロンともいえる彼ですが、それでも投機対象としか見ていない連中同様に、美術品の高騰に一役買うという何とも皮肉な構図がたまりません。

 ウォーホールやバスキアの貴重な映像もありますし、現代アート市場をはじめて作ったとも言える70年代の伝説のスカルオークションの様子も伝えています。時間が短いこともあり、あっという間に過ぎましたが、アートとは何なのか、門外漢の僕にも深く考えさせてくれました。
posted by 映画好きパパ at 06:55 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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