作品情報 2018年アメリカ映画 監督:ボー・バーナム 出演:エルシー・フィッシャー、ジョシュ・ハミルトン、エミリー・ロビンソン 上映時間93分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:シネマート新宿 2019年劇場鑑賞302本目
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【ストーリー】
8年生のケイラ(エルシー・フィッシャー)は中学卒業が目前にせまっていた。だが、コミュ障の彼女は友達が一人も居ない。SNSの動画に、どうすれば友達の多い人間になれるか、という動画をあげているものの、視聴者もない。とうとう、学年で一番無口な子に選ばれてしまうほど。
シングルファザーのマーク(ジョシュ・ハミルトン)はそんな娘が心配であれこれ世話をやこうとするが、かえってうざがられる。ある日、クラスで一番いけているケネディ(カトリーヌ・オリビア)の家でパーティーが開かれることになり、マークと知り合いのケネディの母から、パーティーに誘われたケイラだが…
【感想】
一歩踏み出す勇気がなく、他人から話しかけてもらったら自分が明るく楽しい子だということがわかるのに。ケイラはそう思っており、セルフィーでとる動画でもそんな自分を演じています。しかし、いざ勇気を出してパーティーへいっても、周りはみんな楽しそうなのにボッチで浮いている。しかもプール開きなので、水着もださい。そんな自分が泣きたくなるケイラ。SNSも友達の多いケネディのインスタには、いいねがたくさんついているのに、自分の動画は視聴者がいない。毎回動画の最後に「グッチー」と決めぜりふをいっているのもむなしいばかり。
クラスのちょっと不良がかって、すでに初体験をすませたという噂の男の子エイデン(ルーク・プラエル)が気になるけど、勇気をだしてはなしかけても、自分をおおきくみせるため、やったこともないHなことが得意だとホラを吹いてしまうケイラの情けなさって、自分を鏡でみせられているよう。台所でこっそりバナナで練習しているところを父親に見つかった日には、本当に自殺したくもなります。
高校の体験入学で、高校生のオリヴィア(エルシー・フィッシャー)にかわいがられたケイラもようやく友達ができたと喜びます。しかし、オリヴィアたちと買い物にでかけにいくと、心配したパパが後からこっそりついてきて、オリヴィアたちから変質者と間違えられる騒動も。父親として、さすがにやりすぎと思う反面、娘を持つ父親の気持ちはこうなのかなとおもわされました。予告でもありましたが、自分の娘が何かを燃やしていて、何しているのか聞いたら「夢と希望を燃やしている」なんて言われた日には父親として卒倒しそう。
普通の青春映画と違ってドラマティックなことは何も起きません。また、ケイラもニキビだし、ぽっちゃりだし、スクールカーストの下のほうというのは一目瞭然。それでも、ケイラの日常にどきどきしてしまうというのは、こうした体験がある観客だからなのかもしれません。もっともオバマ前大統領が2018年のベストに選ぶなど、著名人も絶賛していますから、エリートな生活を送っている人が観ても面白いかも。
さて、たいしたできごとは起こらないのですが、驚いたこともいくつかありました。まず、学校で不審者が銃を乱射したときの訓練を普通に行っていること。日本では考えられないのだけど、アメリカでは日常なんでしょうか。それから、ケイラがケネディに話しかけたとき、無視もいじめもしないかわり、ケネディはひたすらスマホの画面をみていて、ケイラの話をよく聞いていないこと。実はケイラも食事中にスマホをいじっていて父親の話を聞いていなかったりして、今の若い世代にとってスマホがいかに大事か、そして、いじめですらもスマホをいじるよりも下の存在かというのはちょっとびっくりです。
そして、映画として極めて珍しいのは父親との関係。シングルファザーということもあるでしょうけど、ケイラを怒るでも、自分の価値観を押しつけるのでもなく、逆にケイラに怒られたり、無視されたりします。それでも娘のことを暖かく見守り、年長の友人のように接します。そんな父だから甘えてしまって、ついケイラもきつく当たるのかもしれません。心があたたまる本作。子供の世代にも親の世代にも観てもらいたい作品でした。
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