作品情報 2019年日本映画 監督:森淳一 出演:吉岡里帆、高杉真宙、田口トモロヲ 上映時間128分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ川崎 2019年劇場鑑賞307本目
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【ストーリー】
警察学校を首席で卒業し、将来を嘱望されていた浜中なつめ(吉岡里帆)だが、運転中に自損事故を起こし、同乗した弟は死亡、本人も失明してしまい、警察をやめる。3年後、盲導犬とともに町を歩いていたなつめは、スケボーと車が衝突した音をきき、駆けつける。スケボーは既に去っていたが、車の中から助けを求める女性の声がした。しかし、運転手はなつめが盲目だとしると、急いで車で逃げてしまう。
警察に通報したが、担当の木村刑事(田口トモロヲ)と吉野刑事(大倉孝二)は、証拠もないし、なつめの勘違いではないかと捜査に消極的。さらに、スケボーの少年、春馬(高杉真宙)が見つかったが、彼は車に女性など乗っていなかったと証言した。誘拐事件が間違いなくあったと確信したなつめは、春馬に手助けしてもらい、独自の捜査にのりだす。一方、定年間近の木村は、なつめが元警察官であったことを知り、最初から事件を見直すのだが…
【感想】
オリジナルは韓国映画、その後中国でリメイクしていますが、盲目の元警察官女性が犯人と対決するというプロットは一緒でも、そのほかは日本独自の作品になっています。それでも、韓国サスペンスが源流らしく、暗く、残酷で容赦のない展開が待ち構えていますし、犯人のサイコパスぶりもなかなかのもの。それを日本人俳優がよく演じていました。
自損事故で大切な家族と視力を失い、失意のどん底にあったなつめ。もともと警察官になりたいという正義感があっただけに、誘拐された女性をなんとか救出しようと必死になります。おとなしく見える吉岡が演じているだけに、その秘めた熱意は、春馬や木村刑事らを動かし、恐るべき連続殺人をあばくことになります。
その被害者たちも、いまの日本社会の隙間にいるような弱者であり、SNSの使い方のうまさも併せて、令和の始まりにふさわしいサスペンス映画といえるのではないでしょうか。特に犯人のいっちゃった感と、ほとんど乗客のいない地下鉄駅での追跡劇は、他人に関心がなく、障害者に積極的な手助けも少ないだろう今の日本社会ならではのものかもしれません。
その追跡劇を含め、中盤から終盤にかけての勢いの良さは、そんなことしちゃまずいよ、というこちらの突っ込みすら計算にいれたうえでのもの。同じく韓国映画が原案の「22年目の告白」同様、この手の映画好きにはたまりません。森監督は「リトル・フォレスト」なんて癒し系の映画の印象が強いのに、やはりプロはさすがですね。
吉岡は心に傷を負いつつも、一途な正義感をもったヒロインを好演。たんに美人な役柄ではなく、薄いメイクですが、内面の芯の強さがこちらに敬意を抱かせるような演技をしていました。脇役にいたるまで無駄な配役もないですし、なにより盲導犬役の犬がいい。映画だから盲導犬の役割が実際と違う部分もありますけれど、こうした犬が視覚障害者のパートナーになっていることを知ってもらえるのではないでしょうか。
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