2019年10月13日

ホテル・ムンバイ

 今年一番の衝撃作といっていいでしょう。2008年のムンバイ同時テロで多くの犠牲者がでた高級ホテル「タージマハール・ホテル」で何が起きたかを描いた作品。人命がゴミのように軽く、テロの狂気と怖さをまじまじと見せつけられ、見終わった後も引きずる作品です。
 
 作品情報 2018年オーストラリア、アメリカ、インド映画 監督:アンソニー・マラス 出演:デヴ・パテル、アーミー・ハマー、ジェイソン・アイザックス 上映時間123分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜 2019年劇場鑑賞308本目



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 【ストーリー】
 2008年11月26日、インド・ムンバイ。テロリスト集団が各地で銃を乱射し、多くの死傷者が出た。五つ星ホテルの「タージマハール・ホテル」にもテロリストが乱入し、従業員、宿泊客を片っ端から射殺始める。

 ホテル内のレストランではオベロイ料理長(アヌパム・カー)が従業員を集め、通用口から脱出できるが、客がホテル内にいる限り、彼らを助けたいと提案。アルジュン(デヴ・パテル)ら多くの従業員がホテルに残り、客の避難誘導を始める。客の一人、アメリカ人のデヴィッド(アーミー・ハマー)と妻のザーラ(ナザニン・ボニアディ)は自室に赤ちゃんとベビーシッターのサリー(ティルダ・コバン=ハーヴィー)を残しており、不安でいっぱいになっていたのだが…

 【感想】
 ムンバイテロは170人以上の犠牲者がでて、実行犯は逮捕か射殺されたものの、黒幕の正体はわかっておらず、パキスタンかインドのイスラム過激派ではないかといわれるものの、今なお、不明のままです。今年、事件に関与されたというパキスタンの過激派指導者が逮捕されたとの報道がありましたが、決定打にはいたっていない不気味な事件です。

 本作では実話を舞台にしているため、情け容赦がありません。ハリウッドのフィクション映画でしたら、デヴィッドなり、客にいた元ロシア軍特殊部隊将校のワシリー(ジェイソン・アイザックス)なりがあっさり事件を解決するのでしょうけど、自動小銃をテロリストに丸腰の人間がかなうわけありません。男女を問わず、虫けらのように殺されていきます。自分がホテルにいたらどうなるか。抵抗しても殺され、逃げ出しても殺され、隠れていても殺され、まったく八方ふさがりで、運によるとしかいいようがありません。

 テロリストたちの犯行はとにかく残虐でずる賢い。フロント女性に銃を突きつけ部屋に電話させ、中に人がいるとわかれば、その部屋を襲うシーンは寒気がしました。もうこんな場所にいたら助からないと思うし、トラウマになりかねない場面が次から次へと画面にでてきます。

 予告からするとホテルマンたちが客を助けたようにありますが、これだけ犠牲者がでていると、何それという感じ。さらにゲストルームに隠れていた客たちのなかで、インドの言葉を話していると、白人客が不安がったり、マスコミに電話して犯人にもわかるような情報を伝えたりと、ささいなミスやいざこざがピンチを招き、よけいにこちらのフラストレーションを高めます。

 それでいて、テロリストたちもハリウッド映画のような単なる悪役の記号にしていません。まだあどけない若者たちで、家族のことを心配する。黒幕に異教徒に冨を奪われて貧しくなったと吹き込まれていて、その憎しみと死んだら天国に行けると信じて、平然とテロ活動をする。宗教と貧困の怖さというのをまじまじとみせつけられました。

 皮肉なのは、避難していた部屋から出ようとするワシリーが「神のご加護を」と声を掛けられると、「神が元凶だ」と吐き捨てるシーン。それでいてワシリーは首にかけた十字架を大切にもっています。一方、ホテルのスタッフが「お客様は神様です」というシーンもでてきます。いったい神とは宗教とは何なのかを強烈に考えさせられます。

 もう一つは貧富の差です。犯人たちは貧しく、家族には資金援助がされる約束になりました。犯人がホテルの豪華な内装に驚いたのはまだしも、水洗トイレをみて驚く様子は、21世紀になってもトイレすら完備されていないインドの貧困層の表れでもあり、こうした貧困につけこんだ過激派が事件を起こす構図を表しています。純粋な少年を凶悪なテロリストに仕立てた黒幕はノウノウとしているのですから、もし本当に神がいるのならば、まさに、死後の世界できっちり裁いていただきたいと思いました。

 非常に重い話ですが、二時間をいっきにみられますし、今後、日本でもテロが起こっても不思議ではありません。トラウマになりそうなですが、観る価値の高い作品です。でもデヴ・パテルはマリーゴールドホテルの能天気なホテルマンがよかったなあ
posted by 映画好きパパ at 07:51 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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