2019年10月14日

帰れない二人

 時代に置き去りにされた貧しい人々を手がけ続ける中国のジャ・ジャンクー監督の新作。ヤクザものと、その愛人というなんともエモ−シャルなテーマですが、ジャンクー監督らしく、観客にいろいろ思わせる作品でした。

 作品情報 2018年中国、フランス映画 監督:ジャ・ジャンクー 出演:チャオ・タオ、リャオ・ファン、シュー・ジェン 上映時間135分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:新宿武蔵野館 2019年劇場鑑賞312本目



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 【ストーリー】
 2001年中国山西省の鉱山・大同は不況にあえいでいた。炭鉱閉鎖の噂も流れる中、ヤクザのビン(リャオ・ファン)は、周囲から慕われ、町を仕切っていた。ビンの恋人のチャオ(チャオ・タオ)は、そんなビンを心から愛していた。

 ところが、町のチンピラたちが名前を売るためにビンを襲撃。居合わせたチャオは、ビンの持っていた拳銃で威嚇し、警察に捕まってしまう。中国では銃の不法所持は重く、5年間の刑務所暮らしを余儀なくされたチャオ。だが、出所するとビンの行方は分からなくなっており…

 【感想】
 2001年、2006年、2017年の3つのシーンからなります。それぞれの移り変わりが本当に激しい。2001年の大同は炭鉱町ということもあり、日本の昭和のような風景です。汚い麻雀場にビンたちはたむろし、町は舗装されていない道路もある。ディスコにいけば、若者が踊っているのは「ヤングマン」や「CHA-CHA-CHA」といった日本では昭和にヒットした曲。

 ビンも高倉健の映画に出てきそうな古風なヤクザで、子分達の喧嘩を仲裁したり、恋人のチャオと町をみまわったりと牧歌的です。しかし、そんな安穏とした秩序を、若いチンピラ達は閉塞的に思ったのか、がらがら壊そうとします。世代間の対立が闇社会でも起きている象徴でした。

 続く2006年、チャオはビンの行方を追って三峡ダムの建設地にいきます。そこでは商業化の波に乗って金儲けに成功した人たちと、ダムで住む場所を追われる貧しいものたちの格差がくっきりとでています。したたかなチャオはちゃっかりと小銭を稼ぎますけれど、社会全体の流れには取り残されます。この章の最後に予想もつかないような出来事がおきるのですが、これは、チャオと同年代のジャ・ジャンクー監督が、本当に社会の変化に思ったことなのかもしれません。

 そして、現代。大同は新幹線が通って、ビルが立ち並び近代化されています。しかし、下町にいけば昭和ながらの建物もまだまだ残っています。象徴的なのがチャオをはじめほとんどの人がスマホをもっていること。部屋は何十年前の中国映画に出てきそうなのに、スマホと大型の薄型テレビが鎮座しているのは何ともシュールです。

 この激しい時代のなか、人の心も移ろうもの。ただ、なぜビンがチャオの前から姿を消したのか、はっきりとした説明台詞はなく、みているこちらで想像するしかありません。かつては羽振りを利かせていたビンが、時代に取り残される姿をチャオにみせたくなかったのかもしれないし、チャオへの愛情がなくなったのかもしれないし、受け取る人それぞれでしょう。この2人の20年近い時間の流れ、それは急速な近代化で失ったもの、変わってしまったものへの挽歌のようにみえました。

posted by 映画好きパパ at 21:46 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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