2019年10月16日

ジョーカー

 ハリウッドで今年最大の問題作で、アカデミー賞レースにも絡むだろう傑作ですが、貧しい白人の怒りを暴力で体現させることに肯定的で、大規模テロの悲劇を扱った「ホテル・ムンバイ」をみたあとだと、何とも言えない気分になりました。

 作品情報 2019年アメリカ映画 監督:トッド・フィリップス 出演:ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ  上映時間122分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜 2019年劇場鑑賞314本目




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 【ストーリー】
 大都会ゴッサム・シティの片隅で母のペニー(フランセス・コンロイ)とひっそりと暮らすアーサー(ホアキン・フェニックス)。彼の夢は有名なコメディアンになり、人気テレビ番組の司会者マレー(ロバート・デ・ニーロ)と共演することだった。

 現実にはピエロのメイクで街角で看板持ちをするのが関の山。それも突然笑い出してしまう精神疾患や、チンピラに絡まれる治安の悪さで失敗続き。唯一の慰めが同じアパートに住む黒人のシングルマザー、ソフィー(ザジー・ビーツ)の存在だった。しかし、同僚のランドル(グレン・フレシュラー)から護身のためと渡された拳銃が裏目になり、小児病棟で銃を落としてしまい、首になった。ピエロのメイクのままガラガラの地下鉄に乗ったアーサーは、酔っ払いに絡まれて…

 【感想】
 ネタバレありで感想を書きます。

 「バットマン」シリーズの悪役、ジョーカーにスポットをあて、彼がなぜ誕生したのかを書いたストーリー。半世紀前なら精神病で片付けられたのが、ポリティカルコレクトネスの現在では悪役が誕生するのにもしっかり理由がいります。そして、今のアメリカの矛盾をそのまま落とし込んだために、傑作だけど問題作というのができてしまいました。デ・ニーロが出演しているので「タクシー・ドライバー」と比較する向きもありますが、より、扇動性は本作のほうが高いと思います。

 アーサーは貧乏な白人。周りから見捨てられたという思いで被害者意識と鬱屈した怒りで満ちています。ペニーは、かつて大金持ちのトーマス・ウェイン(ブレット・カレン)の家で働いていたこともあり、トーマスに生活の援助を頼みますが無視されます。そして市長選に立候補したトーマスは、貧困の貧乏人を侮蔑するような表現をします。

 アーサーに地下鉄に絡んできた3人が証券会社のエリートサラリーマンという設定も今風です。貧しいブルーカラーの白人にとって、金持ちや金融機関に詐取されたのが原因という怒りをストレートに表しているのです。また、一見物わかりがよさそうで、実は弱い者を嘲笑するマレーは、リベラルマスコミの象徴でしょう。現在のトランプ政権の支持基盤に、金持ちやリベラルマスコミから見放されたと思っている白人層がいるとされていますが、まさにこうした層の怒りを体現しています。

 もう一つは有色人種の扱いです。僕はきづかなかったのですが、ニューズウィークによると序盤、アーサーに暴行を加えるのはヒスパニックだそう。黒人はアーサーが思いを寄せるソフィーのほか、ちょい役としてカウンセラー、精神病院の職員、ピエロの同僚がいますけれど、ソフィーをのぞいては、アーサーにとって被害者意識を助長するようなことをします。そのソフィーの扱いは本作をみていただきたいのですが、有色人種から貧しく弱い白人が虐げられているというアーサーの主観をみえてきます。さらに、戦後、アメリカの歴史で市民の暴動は黒人が主体でした。しかし、本作での暴動は白人が主体にみえます。

 一方、銃器の責任をアーサーに押しつけたランドルともう一人、貧しい白人でもアーサーの怒りを買う主要人物もでてきます。しかし、それはアーサーを裏切ったことと、金持ちや雇用主のほうを向いて、アーサーのほうを向いていなかった罰があたった。つまりアーサーにとって敵として認識されているわけです。

 アーサーの行動は貧しい白人達から英雄視されます。それはあきらかに人種、階級の分断をあおり、暴力を肯定する内容です。実際、アーサーが暴力に訴える場合、すかっとするように計算されているわけですから、アメリカでもリベラルマスコミから本作に批判が出ているというのも納得できます。僕自身は、今の世の中にぴったりで面白かったけど、無条件に肯定できないというところでしょうか。

 ホアキンは本作のため大減量して、完全にいっちゃったアーサーを好演。彼がアカデミー主演男優賞でも何ら不思議はありません。ジョーカーはヒース・レジャーの印象が強かったけど、ここに現代にふさわしいまったく新しいジョーカーが誕生したといえましょうl

posted by 映画好きパパ at 07:08 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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