2019年10月30日

楽園

 日本のムラ社会のいやらしさを徹底的にえぐった傑作。実際に都会でもこうした同調圧力が強いだけに「ジョーカー」よりも身近で鬱に感じました。

 作品情報 2019年日本映画 監督:瀬々敬久 出演:綾野剛、杉咲花、佐藤浩市 上映時間129分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2019年劇場鑑賞337本目



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 【ストーリー】
 長野県の農村。小学生の愛華(堰沢結愛)が帰り道、行方不明になった。必死の捜索もむなしく、何の手がかりもなかった。それから12年後、愛華と行方不明直前までいた少女・湯川紡(杉咲花)は、心に傷を負ったまま高校を卒業することに。ふとしたことで知り合ったカンボジア難民で日本に帰化した青年・中村豪士(綾野剛)と、心をふれあわせていく。

 一方、都会から限界集落にUターンしてきた田中善次郎(佐藤浩市)は自分のしている養蜂で町おこしができないかと工夫していた。そんなある日、12年前と同じように少女が消える事件が起きた。そのことが3人の運命を大きく変えていく…

 【感想】
 都会に住む人は田舎の人がおおらかで、とげとげしい人間関係はないような印象はありますけど、排他的でドロドロした関係は都会の比ではありません。実際、都会でも学校や会社といった組織で同調圧力が強く、ちょっとでも違うものは排除するのをみると、人口が少なく人の移動が少ない田舎ではどれほど激しいことやら。ちなみに舞台となる長野県飯山市には個人的に縁があり、ふるさと納税で新幹線の飯山駅に僕の名前が載っていたりします(笑)。だから、いかにもという雰囲気がよくわかります。

 さて、3人の主人公はそれぞれ、集団のなかでは異物ともいえる存在でした。都会からきたよそものの善次郎、村の中心人物で愛華の祖父五郎(柄本明)から、「何でおまえがいなくならなかったのか」と詰め寄られる紡、そして、日本人ですらない豪士。彼らは集団から排除され、孤独な生活を送っています。もちろん、顔見知り程度の人はいます。けれども、豪士と紡は、親との距離がわからず、五郎は死別した妻(石橋静河)の思い出以外に頼るものがありません。

 3人がようやくだれかとつながろうとしたときに、うまくいくのといかないのとそれぞれになってしまいます。これは運か巡り合わせなのか、人間の運命はふとしたことで大きく変わってしまう恐ろしさみたいなのを感じました。美しい田園風景で、一瞬、平和な楽園にみえるかもしれませんが、そんなことは決してないことを3人のたたずまいが教えてくれます。

 ピンク映画出身のベテラン瀬々敬久監督は「ヘヴンズストーリー」(2010年)という人間の罪と罰を真っ正面からとらえた4時間超えの大作で衝撃を与えました。しかし、その後はメジャー俳優と組んだ作品は、「菊とギロチン」のような意欲作はあったとはいえ、ちょっと…という作品が多かった。それが完全復活という感じ。ドローンを効果的に使った撮影や、上白石萌音の主題歌など完璧です。終盤からラストにかけての展開は、信頼のおけない語り手もあって、これまた素晴らしい展開。

 配役もそれぞれ見事。特に杉咲は「トイレのピエタ」(2015年)以来の当たり役ではないでしょうか。柄本や、紬の同級生役の村上虹郎といったベテランから若手まで、脇も見応えがある人をそろえました。今の邦画で最高の品質といえましょう。ただ、鬱になるでしょうから、家族やカップルでみるのは不向きかもしれません。
posted by 映画好きパパ at 07:04 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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