2019年10月31日

向こうの家

 西川達郎監督の東京芸大大学院の卒業制作作品。制作者も東京芸大大学院になっていますが、売り出し中の望月歩らも出演しているし、脚本も変化球ながら令和にふさわしい家族や恋愛のあり方を描いていて、なかなかの拾い物でした。

 作品情報 2018年日本映画 監督:西川達郎 出演:望月歩、大谷麻衣、生津徹 上映時間82分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:渋谷シアターイメージフォーラム 2019年劇場鑑賞344本目

 

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 【ストーリー】
 高校生の森田萩(望月歩)は、ラブラブの両親(生津徹、南久保真奈)、しっかりものの姉、芽以(円井わん)、そしてちょっと変わっているけど美人の彼女みなみ(植田まひる)がおり、恵まれた生活を送っているはずが、周囲としっくり溶け込めない。親友の斉藤(小日向星一)と作っていた釣り部が廃部にさせられたことがきっかけで、不登校になる。

 そんななか、父の芳郎が忘れた鍵を拾ったことから、芳郎にとんでもないことを頼まれる。なんと妻一筋だと思っていた芳郎には愛人の瞳子(大谷麻衣)がおり、借家に彼女を住まわせていたのだ。しかし、別れたいと思っているのに別れてくれないため、時間のある萩に瞳子に借家から出て行くよう説得してくれというのだ。半ばあきれながら、父のもう一軒の家に向かった萩だが、瞳子と話しているうちに…

 【感想】
 世界の危機が起きているわけでも、殺人犯に追われているわけでもありません。けれども、高校生の少年にとって父親が浮気しているというのは家庭崩壊につながりかねない一大事。それを父親から浮気隠滅を手伝ってほしいと頼まれることから、非日常的な日常がはじまってしまいます。

 ちょっとアンニュイで年上のお姉さんがいるもう一軒の家に萩は泊まり込むことになります。そして、大人の女性ならではの魅力と、姉への思いとも恋ともつかない不思議な気持ちに陥ることになります。萩はほとんど感情をあらわにしない、物静かな草食男子に見え、瞳子の独特のペースや、情けない芳郎との関係もあいまり、一種、不思議な空間がスクリーンの中に広がっていきます。だいたい、高校生男子といえば、一生のうち煩悩がもっとも激しい時期なのに、一つ屋根の下にとまっても手すら握ることがないし、それが普通に見えてくるのですから、令和の少年という感じでしょうか。

 友達みたいな母娘の関係とかはよくききますが、自分の浮気の始末を息子にさせるというのは、父親の威厳もなにもないわけで。それだけ大人が幼稚化しているということなのかもしれません。昭和どころか平成でもまず描かれないような父と息子の関係は、制作年は平成とはいえ、令和の時代にぴったりです。もともとそんな父のことを好きで何でもいうことを聞いていた萩ですが、半ばあきれ、瞳子の魅力にひかれます。それでも父と瞳子と3人で飲むシーンでの表情やみなみとの会話のキャッチボールは、大人のずるいけどねちっこい恋愛と少年の純粋な慕情との違いが垣間見え、まだ20代なのに西川監督はすごいやと思わせました。

 そして、なんといっても全編を包み込むオフビートのユーモア。例えば、釣り部が廃止されたあとの部室にはシイタケ研究会が入ります。高校生が真面目にシイタケを研究するクラブを作るなんて、爆笑はしないけど、思わずニヤニヤしてしまいます。瞳子の隣人の千葉(でんでん)なんて、何かそれらしいことを話すたびに、真面目な台詞なのにどこかピント外れで笑えるのは、でんでんの本当にうまい使い方でした。

 瞳子の家は逗子の高台にあり、海と山の美しい町。そこの古い日本家屋で本に囲まれた生活というのは、ある種のメルヘンのよう。冷静に考えると、森田家の女性陣にとっては夫と息子に裏切られ、男性不信にしかならないのひどい話だろうけど、ロケ地や美術、そして主要3人の演技で中和され、少年の成長物語につながりました。草食男子の望月の受けの芝居に、大人の女性の魅力をしっかりみせつけた大谷の芝居がうまくはまり、今の時代の家族関係をあらわす一種の寓話のようにもみえます。
posted by 映画好きパパ at 08:05 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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