2019年12月06日

幸福路のチー

 台湾のある平凡な女性が半生を振り返るアニメ。女性の生きることが大きく変わるとともに、政治体制も激変した台湾が舞台である一方、ノスタルジックな部分は日本と共通するところもあり、日本のおじさんがみてもしっとりくる佳作でした。

 作品情報 2017年台湾映画(アニメ) 監督:ソン・シンイン 出演 グイ・ルンメイ、チャン・ボージョン、リャオ・ホイジェン 上映時間111分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2019年劇場鑑賞392本目



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 【ストーリー】
 1975年生まれの女性、リン・スーチー(声グイ・ルンメイ)は、故郷の台北を離れてアメリカで働き、白人男性との間に家庭ももっていた。ある日、祖母(ジワス・ジゴウ)が亡くなったとの連絡をうけ、久々に台北の下町、幸福路に戻る。

 懐かしい町並みを見て、彼女は幸福路に引っ越し、チーと呼ばれていた幼少期を思い出していた。貧しいながらも温かい家族、時には喧嘩もした親友たち。30年以上前に思い描いていた自分になれたのだろうか…

 【感想】
 子供の頃にあれほど大きくみえた両親の背中、大河のようにみえた町を流れる川、そして、永遠に続くと思われた学校や友人たちとの毎日。大人になってみればそれがいかにはかなく、それゆえに懐かしいものか、というのは世界に共通した感情なのでしょう。特に日本と台湾は文化が近く、例えばチーたちが夢中になったアニメが「ガッチャマン」だったり、貧しいながらも家族そろって食卓を囲むなんていうのは、今の40代以上が、自分で体験してなくてもノスタルジーを呼び起こされるのでは。

 もちろん、子供時代がすべてよかったわけではありません。学校では貧乏で、祖母が先住民族出身ということがあり、クラスで浮いた存在でした。他の生徒だけでなく、学校もチーや、米軍兵士とのハーフの少女ベティ(ペニー・フォン)といった子供には厳しくあたったりするなど差別が色濃く残っています。

 また、女性の役割もかぎられているなか、チーは貧乏な両親から将来、医者や弁護士になって金を稼ぐようにと過剰な期待をかけられます。ここもいかにも東洋的な発想ですね。そんななか、彼女のやることを温かく見守るおばあちゃんの存在がなんとも愛おしい。もちろん、両親も彼女のことを思っているわけですけど、やはり、おばあちゃんの無償の愛というのは違うわけです。

 しかし、医者にならず文学部に進んで新聞記者となり、やがてはアメリカて働くようになった彼女。端から見ればアメリカ人と結婚でき、裕福な暮らしをえたわけですけど、根っこの部分が台湾につながっている彼女にとって、完全にアメリカンナイズされるというのは潜在意識がうけつけませんでした。そのへんの葛藤も東洋的で、見ていて苦しくなっていきます。

 そして、戻ってみた現実。ニュー・シネマ・パラダイスで故郷に戻ってきた主人公が、あまりの寂れ方に驚くシーンがありましたけど、本作も同様でアメリカのような世界最先端で動き回っている国からくれば、経済成長があったとはいえまだまだ家計は苦しい。友人たちも、いわゆる成功者とはほどとおい。それでも、根を張った生き方をすることで、人間の幸せというのは何かという根源的な問いに一つの答えを与えてくれます。

 絵柄は子供向けのやさしい感じですが、人生の岐路に立つ中年以上の人がみても十分楽しめ、感慨深くなる作品。自主映画に近いつくりですが、台湾を代表する女優のグイ・ルンメイが出演を決めるなど、共感した多くの映画陣の協力で、極上のできに仕上がりました。監督はちびまる子ちゃんの影響を受けたと言いますが、アニメのちびまる子ちゃんだけでなく、さくらももこさんの一連の著作を読んでいるような感じを受け、日本人にもしっくりくる作品になっています。
posted by 映画好きパパ at 08:02 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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