2019年12月26日

読まれなかった小説

 トルコの巨匠ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督が、3時間以上で家族の問題を会話劇中心に描きました。文学、宗教も含めて家族のあり方をミニマムな会話劇でつづっています。なんかこのままいつまでも続きそうな気をさせる、まさに小説のような映画でした。

作品情報 2018年トルコ 、 フランス、 ドイツ、 ブルガリア、 マケドニア、 ボスニア、 スウェーデン、 カタール映画 監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン 出演 アイドゥン・ドウ・デミルコル、ムラト・ジェムジル、ベンヌ・ユルドゥルムラル 上映時間189分 評価★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2019年劇場鑑賞418本目



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 【ストーリー】
 大学を卒業して、故郷の海辺の小さな町チャナカレに戻ってきたシナン(アイドゥン・ドウ・デミルコル)の夢は小説家になること。「野生の梨の木」という小説を書き上げたが出版費用がない。あちこち回って金を借りようとするがうまくいかない。

 父親のイドリス(ムラト・ジェムジル)は学校教師だが競馬にはまっているいい加減な男。金があればすぐギャンブルに使うため、家は貧乏だ。シナンはそんな父親を軽蔑して、教師にならずに小説家になろうと決意したのだが…

 【感想】
 数分ぐらいのシークエンスにわかれ、基本的にはそこで2人ないし数人の会話劇が続きます。シナンとイドリス、シナンと母のアスマン(ベンヌ・ユルドゥルムラル)といった家族の会話が多いですが、初恋の人ハティジェ(ハザール・エルグチュル)との再会や、地元作家のスレイマン(シャーカン・ラスキン)との文学論など、トピックスも多彩にわたります。

 しかし、3時間以上のあいだ、いわゆる世間を揺るがすような大きなイベントはおこりません。本人や家族にとって大きなできごとであっても、他人からみれば何だかなあという出来事の連続。ただ、そのスペクタルのなさが、いわゆる純文学をよんでいるような気分にさせられます。

 その一つはシナンもイドリスも、観客の感情移入の対象になりにくいから。シナンは自分の文才に自負があるためか、父親を小馬鹿にしているし、地元作家のスレイマンにも傲慢な態度をとり、実際にこんなやつがいたら嫌なタイプ。一方、イドリスは正確は真逆でいつもニコニコしていますが、金にだらしがなく、息子のジャケットから金を盗み出して、それでいて平然としたりといか、なんとも人を食った人物です。

 こんな2人の会話が延々と続きますが、同じように会話劇の連続だった「お嬢ちゃん」のように、いつしか、どこまでもこの世界が続くのが当然と思わせるような感覚を起こさせるから不思議です。日本と文化も風習も違うとはいえ、功名心にはやる若者と、流されて生きた大人なんていうのは、洋の東西を問わずある話で、なんとなく、はまっていきます。

 さらに、トルコの田園風景や海辺の町の何気ない日の当たり方がなんとも見事。トルコというとこれまでの映画から荒涼たるイメージがあったのだけど、緑豊かな畑や森はただただ、感嘆してしまうし、雪の降る様子もまた中東の海辺の町が舞台なのに、と驚かされます。ただ、文学論にしろ宗教論にしろ、ちょっと高尚すぎて頭にすっと入ってこなかったのも事実。なんか名画を見たような気持ちにさせられたから、それなりに満足しましたけど。
posted by 映画好きパパ at 05:30 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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