作品情報 2018年フランス映画 監督:ニルス・タヴェルニエ 出演 ジャック・ガンブラン、レティシア・カスタ、ベルナール・ル・コク 上映時間105分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:角川シネマ有楽町 2019年劇場鑑賞428本目
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【ストーリー】
19世紀末、妻を失って悲しむ郵便配達員のシュヴァル(ジャック・ガンブラン)は無口で、周囲からは浮いていた。ある日、同じように夫を失ったばかりの女性フィロメーヌ(レティシア・カスタ)と出会い、互いに惹かれ合うようになる。
アリスという娘も生まれたある日、山道から滑り落ちたシュヴァルは奇妙な石を見つけた。新聞や雑誌で異国の記事を見るのが好きな彼は、アリスのためにこの石を使って宮殿を作ろうと途方もない夢にとりつかれる…
【感想】
僕は全然知らなかったのですが、建築知識も無いごく普通の郵便局員が、娘のために城を作りたいという一年から、なんと33年にわたって幅26メートル、高さ10メートルの巨大な石の宮殿を作り上げました。もちろん重機などなく、手押し車に石を積んでセメントで固めるだけ。
しかも、郵便配達員としてはきちんと仕事をして、1日10時間、数十キロも延々歩いて配達するのです。そのあと10時間も宮殿の建築作業に携わるのですから、何が彼をかき立てたのか不思議でたまりません。そんな彼を支えたのがフィロメーヌとアリスでした。
ろくに会話がなく、時間も金もすべて宮殿についやす夫に、時には怒りを、時にはあきらめを感じつつ長年連れ添った彼女。夫婦関係のある種の理想とでもいうのでしょうか。そして、娘のアリスもおおよろこびで父親にまとわりつきます。村の中で悪口をいわれても、父親が自分のためにしているというのがわかっているのか、この家族の絆というのは本当に深かった。
ただ、そんなに世の中は甘くありません。19世紀末から20世紀前半にかけて、第一次大戦も含めて世界は大きく変わります。思いがけない悲劇やうれしいことも起きます。そんななか来る日も来る日も宮殿作りというのは一種の狂気ですが、あくまでも淡々としているシュヴァリエの姿は一種の哲学的人物像にすらみえてきます。
ピカソらも驚嘆したという宮殿は、彼が雑誌や新聞でみただけのアンコールワットやモアイ像といった世界中の遺跡がでています。本当にどうしてこんなものができたのか、人間の執念、夢とは何なのか、さまざまなことを考えさせられる秀作でした。
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