2020年01月05日

2人のローマ教皇

 前教皇のベネディクト16世と現教皇のフランシスコの友情や信仰を描いたネットフリックス作品。濃密な会話劇の間にとぼけたユーモア、そしてフランシスコの生きてきた過酷な人生で、上質な作品に仕上がっています。

作品情報 2019年ドイツ、イタリア、アルゼンチン、アメリカ映画 監督:フェルナンド・メイレレス 出演 アンソニー・ホプキンス、ジョナサン・プライス、フアン・ミヌヒン 上映時間125分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:吉祥寺アップリンク 2019年劇場鑑賞430本目



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 【ストーリー】
 21世紀に入り、カトリック教会は大きく揺れていた。同性愛や避妊、中絶を認めない教義は世間とかけ離れているという内部からの批判のうえ、マネーロンダリングをはじめ教会幹部がかかわった犯罪も起きていた。カトリックの上層部は改革派と保守派に割れていた。

 2005年の教皇選挙で、保守派のリーダーでドイツのラッツィンガー枢機卿(アンソニー・ホプキンス)が、改革派のリーダーでアルゼンチンのベルゴリオ枢機卿(ジョナサン・プライス)を破った。ベネディクト16世になったラッツィンガーだが、教会内部の問題に後ろ向きだと批判されていた。2012年、ベルゴリオは引退を決意し、バチカンに向かう。そして、2人だけでの対話が行われのだが…

 【感想】
 原作は舞台だそうで、2人の濃密な会話劇が楽しめます。しかし、宗教的なまじめなものだけでなく、予告編にもあるようにビートルズを知っているかとベネディクト16世に聞かれたベルゴリオが、「エリナ・リグビー」とビートルズの曲を答えると、ベネディクトが「だれだ?」と人名だと勘違いしたり、庶民派のベルゴリオがローマの屋台でぱくついたピザをベネディクトにごちそうしたり、とユーモラスな場面も多々あり、飽きさせることがありません。

 ただ、実際にはベルゴリオが教皇になるまえに、2人だけの対話はなかったそうだし、まして、サッカーのテレビ観戦で盛り上がるなんかも史実ではないとか。しかし、名優2人の演技とカリスマ性で、本当に2人の教皇の間でこうしたことが起きたのではないかと思わせるのはなかなかうまい脚本と演出でした。

 教皇は神ではなくて人間だという台詞があるように、2人とも人間として、なおかつ過ちを悔いている人間として描かれています。ベルゴリオはアルゼンチンの軍政時代に、反政府派を弾圧する軍政から教会を守ろうとして、仲間を見殺しにせざるをえなかった過去が汚点となっています。このあたりは「法王になる日まで」で詳しく描かれていますが、本作だけでも十分わかります。一方、ベネディクトは教皇なのに教会の腐敗を見て見ぬふりをしていました。トップだからといって、12億人もの巨大組織ではできることが限られている無力感からです。その過ちを悔やみつつ、現代や将来を真摯に生きようという姿は感動的なものがあります。

 また、庶民派としてきさくに町を歩き回るベルゴリオはもとより、ベネディクトもテレビでサッカー観戦をしたり、ピアノを弾いたりといった人間らしい姿がみられます。スマートウォッチで1日1万歩を歩くよう指示されるのは、どこにでもいそうな老人でしかありません。しかし、宗教のことを考え、神と向き合うようになるとその姿が一変します。そこらへんが、無宗教の僕にはわかりにくいのですけど、やはり本気で神を信じるとはこういうことなのかというのがわかります。

 そして、2人の関係がとにかくチャーミング。2007年は敵対的な関係に近かったのが、2人だけになって対話を繰り返すうちに、タイプは違っていても神に真剣に向き合い、人生を正面から歩んでいることがわかるようになります。まさに神のもとでの兄弟という言葉がぴったり。まさに名優2人の演技と存在感をひたすら味わい尽くせる極上の映画だったといえましょう。
posted by 映画好きパパ at 06:57 | Comment(0) | 2019年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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