2020年01月28日

リチャード・ジュエル

 1996年のアトランタ五輪爆破事件で、爆弾を発見して多くの人命を助けながらFBIとメディアによって罪をでっちあげた警備員の実録劇。日本でも同じ頃松本サリン事件がありましたし、絵空事とは思えない怖さです。

 作品情報 2019年アメリカ映画 監督:クリント・イーストウッド 出演 ポール・ウォルター・ハウザー、サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ 上映時間131分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:横浜ムービル 2020年劇場鑑賞22本目 



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 【ストーリー】
 リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は、生真面目すぎて暴走するところがあり、希望している警察官になれず、警備員をしていた。アトランタ五輪のイベント広場で不審なリュックを発見。中には時限爆弾が入っており、観客を避難させている最中に爆発し、死者2人と100人以上のけが人がでた。しかし、ジュエルが発見しなければ、犠牲者ははるかに多かったはずで、ジュエルは英雄として賞賛された。

 だが、FBI捜査官のショウ(ジョン・ハム)は、ジュエルがいいとししても母親ボビ(キャシー・ベイツ)と2人暮らしをしており、孤独な白人で注目を浴びたいというプロファイリング結果と一致することから、彼を容疑者として捜査する。地元紙の女性記者キャシー(オリヴィア・ワイルド)はその情報をスクープし、たちまちジュエルは英雄から容疑者へと扱いがかわり、報道合戦が過熱してしまう。ジュエルは旧知の弁護士ワトソン(サム・ロックウェル)に弁護を頼むのだが…

 【感想】
 捜査権をもつ警察権力と、第4の権力といわれるマスメディアが一体化すれば、無実の人間を犯人視することなどは簡単にできてしまいます。映画では、自分の担当エリアでテロがおき、失態にあせったショウが見込み捜査をして、さらにキャシーと男女の仲になってリークするということが描かれていますが、似たようなことはアメリカでも日本でも起きているのでしょうね。

 最初、ジュエルは警官志望だったために、警察にはむかおうとしませんでした。それをいいことに、ショウたちは無理矢理自白をでっちあげようとします。もし、ワトソン弁護士がいなければ、嘘の自白でジュエルは有罪になったでしょう。ワトソンの、「国家権力と戦うのでなく、国家権力に雇われているクソと戦う」というのは、共和党支持者だけど個人の自立に重きをおくイーストウッド監督らしいせりふです。最初、刑事弁護には素人のワトソンが何で警察に対して警戒しているのか不思議でしたが、やはり警察は嘘でもいいから犯人を捕まえたいというところがあるのでしょうね。

 そして、過熱する報道は自分たちで事実を検証しようとせず、ジュエルの家の前にべったりとはりつきます。これは日本でも今でもおなじみの風景で、事件どころか俳優の不倫程度のことでもこういうメディアスクラムがみられるのだから、メディアの信頼がどんどん薄れていくのも当然でしょう。

 また、いかにもメディアらしいなと思ったのが、ボビが息子の無実を訴える名演説をしたところ、流れが変わってしまったところ。記者のキャシーは涙ぐんでいましたが、まあ、ムードに弱いのが記者なんだなとしみじみ実感させられました。ちなみにアトランタジャーナルはいまだにジュエルに謝罪していないどころか、この映画に逆ギレしているのですよね。メディアの傲慢さはこれまたどこも一緒のようで。

 イーストウッドはこのところ実録モノを何本もとっていますが、そのなかでも社会の構造の矛盾にまで切り込んだ本作はピカイチだと思います。イーストウッドらしい抑制された描写が、かえってみている我々に感動を与えてくれます。ポール・ウォルター・ハウザーは「アイ・トーニャ」で妄想狂の犯罪者役だっただけに、何も知らない人がみれば怪しく見えるといううまい配役。サム・ロックウェルは公開中の「ジョジョ・ラビット」同様、おいしい役をもっていっており、この2本を同時期に見られるというのは洋画ファンにとってはめっけもの。そして、キャシー・ベイツの存在感はさすが。久々に名演に魅了されました。
posted by 映画好きパパ at 07:57 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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