2020年03月01日

山中静雄氏の尊厳死

 僕は東京出身なのでわかりませんが、地方出身の人はやはり最後は故郷で迎えたいという気持ちになるのが多いのかな。日本人の死生観を正面から取り上げた地味だけどまじめな作品です。

 作品情報 2019年日本映画 監督:村橋明郎 出演 中村梅雀、津田寛治、高畑淳子 上映時間107分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シネスイッチ銀座 2020年劇場鑑賞57本目



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 【ストーリー】
 長野県の浅間総合病院に、静岡在住の末期がん患者、山中静雄(中村梅雀)が入院を希望しに来る。長野の貧しい農家出身の静雄は、若いころ静岡の雑貨屋に婿養子に入ったが、死ぬのだったら最後の日々を故郷の浅間山が見えるところで過ごしたいというのだ。

 妻のつね子(高畑淳子)は静岡から通うのは大変と消極的だったが、担当医の今井(津田寛治)は、静雄の熱意に押し切られて入院を許可する。しかし、静雄の病状は手の施しようがなかった、彼は日中の外出許可をもらって、今は廃村同然になっている故郷の村に行き、自分の手で自分の墓を作ろうとする。

 【感想】
 ユダヤ教の映画「ロニートとエスティ」に続いてみたので、キリスト教の死生観と日本人の死生観の違いをぼんやり考えながら見ていました。若さもあるとはいえ、信仰と故郷を捨てたロニートと、大人になって何十年と過ごした静岡でなく生まれ故郷の信州に帰り、先祖代々の墓所に入りたいと末期がんをおして戻ってきた静雄。信州という地で生まれたことが、自分の血を呼び寄せたのでしょうか。

 物語は前半は静雄、後半は今井が主役という感じで進みます。何人もの死をみとってきた今井にとっても、末期の人間をみることは決して慣れることはない。いつもにこやかに静雄と接し、最大限、彼の希望を聞いてあげようという今井の姿は立派ですが、同時に、静雄の死に向かっていく様子は今井の心も削っていく。当たり前ですが末期がん患者も医師も人間であり、強さも弱さももっているということなのでしょう。

 自分が末期がんになったらどういう感情になるのかわかりませんけど、静雄の故郷や先祖への思いというのは、死んだ後もつながっていたい証なのだろうなとみていて思いました。つながっていれば死後も怖くない。不思議に思ったのが、この映画に静雄の子どもがでてこないのです。劇中の会話では子ども2人いるのですが、見舞いのシーンは皆無。結局、妻や子供よりも故郷をとるということなんでしょうかね。

 中村梅雀のひょうひょうとした演技に、珍しく津田が誠実で気の迷いの多いありふれた人間を演じています。この2人の医師と患者であり、同時に互いの立場を思いやる態度が、いかにも大人の関係という感じでうらやましかった。まさにタイトル通りの尊厳死であり、こういう作品をみると余計な延命治療はしないでほしいと思ってしまいます。
posted by 映画好きパパ at 07:37 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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