2020年03月12日

種をまく人

ここ何年かで一番の衝撃作というか心をえぐられた作品。小規模公開だけどみられてよかった。インディペンデント映画はこうした隠れた傑作があります。

 作品情報 2019年日本映画 監督:竹内洋介 出演:岸建太朗、足立智充、竹中涼乃 上映時間117分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:アップリンク渋谷 2020年劇場鑑賞76本目 



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 【ストーリー】
 3年ぶりに精神病院を退院した高梨光雄(岸建太朗)は、弟の裕太(足立智充)の家に身を寄せる。裕太の妻・葉子(中島亜梨沙)と長女、知恵(竹中涼乃)は暖かく歓迎してくれる。また、光雄が入院している間に生まれた次女の一希(竹内一花)はダウン症だが無邪気な笑顔で光雄にすぐになついた。

 翌日。共働きの裕太夫妻は、光雄に子供たちを託して仕事にでかけた。知恵にせがまれた光雄は2人をつれて近くの小さな遊園地に行く。だが、光雄がトイレに行っている間に、突然の不幸が起きてしまう。それはわずか10歳の知恵に、重い十字架を背負わせることになった…

 【感想】
 戦争、難病、貧困など重たいテーマの映画に衝撃を受けたり、心をうたれたことは何度もあります。けれども、そうした映画は、ある種自分とは遠い世界の出来事。言葉は悪いですが、「怖いねえ、でも自分は大丈夫でよかった」と他人事に思えてしまうも事実です。しかし、
本作の場合、子供が予期せず罪をおかしてしまったときに周囲の大人はどうすればよいのか、という我が家でも起こりうることがテーマです。

 知恵は悪意があるのでなく、むしろ素直でまじめな女の子。10歳なので自分のしたことが悪いことだとわかっており、どんどん壊れていきます。両親、叔父、警察官、担任教師など周囲の大人も、少女をこれ以上傷つけたくないために、それぞれ行動しますが、裏目に出てしまいます。大人たちが最善と思ってとった行動が実は事態を悪化させていく。親子とはいったい何なのか、家族といえども目に見えない深い溝があるのかとぞっとします。

 そして、家族で平穏に暮らすために押し隠していた醜い本音が噴出してしまいます。その大人たちの醜さを少女は目に焼き付けることになり、しかも自分のせいなんですから、みているこちらが胸が痛くなります。大人たちの苦しみも同様です。光雄は放浪生活も経験したうえ、ようやく家庭の暖かさにふれられました。葉子はダウン症の次女を育てつつ、仕事もしていていっぱいいっぱいだったけど、一希の笑顔が救いだったのでしょう。裕太も仕事は厳しく、疲れ果てた心身を癒してくれるのが家族だったはず。それが一日にしてこの世の地獄に代わってしまったのです。

 タイトルは聖書、そしてゴッホから。ゴッホの代表作でもあるひまわりも、重要なアイテムとして登場します。そして、撮影されたのがまだ東日本大震災の傷跡の残る2015年だったため、震災も作品の遠景として登場します。説明が少なく観ているほうに考えさせるタイプの作品。BGMも少ないし、ラストはどちらにもとれるような重要なシーンがあり、韓国の名匠イ・チャンドンの作品を思い出しました。

 いわゆるノースター映画ですが、それだけにどこで起きても不思議ではない感覚となります。役者それぞれが、本当に光雄や裕太、葉子がいるようにみえて、お芝居くささが皆無です。特筆すべきは竹中涼乃の表情。天才子役といわれる人はたくさんいるけれど、セリフ回しだけでなく、セリフがないときの表情、しぐさというのが素晴らしかった。インディペンデント映画なので映像化や配信されるかわかりませんが、機会があればぜひともお勧めの一本です。

*上映終了間近なので順番を入れ替えます
posted by 映画好きパパ at 07:23 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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