2020年03月28日

21世紀の資本

 フランスの経済学者、トマ・ピケティの世界的ベストセラー「21世紀の資本」は、現代の格差社会を分析した名著ですが、分厚い専門本でした。なかなか一般の人にはよみづらかったのを、ピケティ自身が監修してドキュメンタリー映画を制作した本作は、「ウォール街」「怒りの葡萄」など映画の引用もふんだんに使っており、ピケティやステイグリッツ、フランシス・フクヤマら一流の経済学者がわかりやすく説明しています。

 作品情報 2019年フランス、ニュージーランド映画ドキュメンタリー 監督:ジャスティン・ペンバートン 出演:トマ・ピケティ 上映時間103分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:渋谷アップリンク 2020年劇場鑑賞90本目 



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 【ストーリー、感想】

 ピケティがいいたのは長期的に見れば、資本を投入して得られる利益は経済の成長率から得られる利益より大きいというもの。つまり、投資のほうが労働よりも大きな利益を上げ、しかもそれが蓄積されていくことで、金持ちはどんどん金持ちになり、格差が拡大していく一方ということです。

 18世紀や19世紀は、ごく少数の大金持ちと大部分の貧乏人にわかれ、貧乏は病気や飢えと隣り合わせで、文字通り貧乏は死につながりました。しかし、あまりにも格差が大きくなると革命が起きる危険もあります。一方で、産業革命後に大量生産の時代を迎えると分厚い中間層を消費者として作る必要があります。こうして、福祉制度が広まりました。

 さらに、大恐慌や2度の世界大戦で、国民の一体化が国力に結び付くことになると、国は貧困を放置していくわけにいきません。そのため、富裕層から高額な税金をとりたてました。アメリカでは一時、最高所得税率は実に90%、日本でも75%に上っていたのです。

 しかし、製造業よりも金融資本のほうが力を持つようになると、資本家優遇の政策が世界中で始まります。所得税率、法人税率はどんどん引き下げられ、自己責任の名のもとに福祉は切り捨てられていきます。こうして、21世紀になると、ほんの一握りの金持ちや銀行家が莫大な富を独占するようになりました。 しかも、相続税が軽いため、家がたまたま金持ちだった子供は何もしなくても金持ちになる一方、かつてのように貧困でも勤勉に働けば金持ちになるというアメリカンドリームは消えてしまいます。


 金持ちが慈悲深ければまだしも、ピケティが紹介したモノポリーを使った心理実験だと、たかだかゲームに過ぎないのに、モノポリーで最初からお金をたくさんもった人は、貧乏な人に大して、嫌がらせをしたり、馬鹿にしたりという結果がでました。greed is good(強欲は善)という言葉が映画「ウォール街」ででてきますが、最初は悪役の言葉だったのに、今は強欲を正当化する言葉に使われていきます。さらに、今や国境を越えたグローバル企業の課税逃れが当たり前になっています。

 今回のコロナをみても、アメリカで拡大した理由として、貧困層が病院になかなかいけないし、休んだらすぐクビになるから体調不良でも働きにでて感染を広げたことを上げる意見も出ています。つまり、貧乏がもはや社会の脅威になるわけですね。

 ただ、ピケティの議論には大きく2つ欠点があると思います。1つは、富裕層への課税強化を解決策としてあげていますが、現実的にほぼ不可能ということです。選挙では富裕層はごく一握りなので、それ以外の人が格差解消で協力すればいいのですが、人間というのは目上を尊び、目下を馬鹿にするという習性があります。国内の生活保護バッシングとかみていると、貧乏人同士が足を引っ張っているとしかみえません。金持ちは安泰のままなのです。

 もう一つはグローバルで見た場合、アジア、アフリカの貧困層が急激に豊かになっています。国連の統計だと21世紀に入って10億人が飢餓から救われました。つまり、先進国で格差が増大しても、飢え死にする人はわずかですが、その一方で、新興国の飢餓は猛烈に改善されているわけです。ただ、その分を先進国の中間層から富が移転しているといえるのですが、それが悪いといいきれるのか。例えば日本は韓国やシンガポールなどに比べて、大卒初任給は低くなっています。日本人の中間層が貧乏になり、韓国やシンガポールの中間層が豊かになったわけですが、そのことをとめることが物理的にも道義的にも不可能でしょう。

 だから、本作をみて、格差の原因をしったうえで、個人個人が投資をはじめるなどで自己防衛に走るしかないのかという気になっています。今回のコロナで、おそらく世界中が大不況に見舞われるでしょう。ひごろから経済への感度を高めておくためには、本作をみておくべき作品です。
posted by 映画好きパパ at 07:33 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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