2020年03月31日

ヒミズ

 園子温監督の新作。映画はその時代の雰囲気を伝える役割があるので、東日本大震災を受けて、原作から離れて映画独自のストーリーにした園監督の姿勢を支持します。


 【ストーリー】
 ボート屋の息子の中学生、住田祐一(染谷将太)は、父(光石研)は酒乱で蒸発、母(渡辺真紀子)は男遊びが激しい最悪の家庭環境。だがボート屋をついで普通に生きるのが夢だ。ボート屋の敷地には、東日本大震災から避難してダンボールハウス住まいになった夜野(渡辺哲)、田村夫妻(吹越満、神楽坂恵)らが住み着いているが、彼らからも住田は一目置かれ、仲良くしている。

 同級生の茶沢景子(二階堂ふみ)は、住田のことが好きでしょうがなく、アタックをかけるがなかなか相手にされない。そのうち、住田は両親に捨てられ独り住まいとなり、茶沢は必死に彼を支えようとするのだが・・・



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 【感想】
 冒頭、津波で何もかもが荒廃してしまった街並みに、被災者役の俳優たちが呆然と立ち尽くす。カメラがなめるように廃墟を映し出す描写をみているうちに、思わず涙があふれてきそうになった。東日本大震災からまだ1年もたたないうちに、劇映画にとりいれ、しかもストーリーの根底を流れているというのがすごい。この印象的な場面は繰り返しでてくるのだけど、それだけで、こちらの魂が揺すぶられる感じ。

 さて、「普通最高!」と叫ぶ住田、人間のクズのような両親のもとに生まれただけ十分ハードモードなのに、敷地にすみついている被災者たちからは、頼りがいのある先輩のように慕われ、どうみても普通ではない。彼に想いを寄せる茶沢も、時には暴力的だったり、時にはパンツ丸出しですっころんだり、とこちらも普通ではない。しかし、それだからこそ、震災前は当たり前すぎて、むしろ変わらない日常へのイライラが募っていたのに、実は本当に大事なものは、明日もきょうのように続くことなんだ、と思う最近の僕らの気持ちにぴったりと寄り添う。空気の読めない熱血担任教師(矢柴俊博)が語る、薄っぺらい「夢が大事、君たちは世界でひとつだけの花」という言葉と比べたら、はっきりとでている。

 その後、住田は想像もつかない経験をして、絶望のどん底に陥ってしまう。このへんで思ったのが、これまでの園監督の作品って、ありえない出来事でも、力業でぐいぐいひっぱっていくのだけど、本作は、ありえない出来事はあくまでもドラマだから、とちょっとひいて感じられたこと。いわばフィクションであるという感覚が見ている最中からひっきりなしに起きたのだ。これは、監督は寓話として取り上げたかったとも思える。でも、それだけに、ラストシーンがスクリーンのなかの世界から飛び出して、今の日本人みんなにかけるエールに聞こえてならなかった。

 染谷、二階堂は、若さをいかした体当たり演技の数々。愛のむきだしの西島隆弘、満島ひかりコンビを彷彿とさせる。さらに、脇役をここ何作かの園作品の出演者たち、吹越、渡辺、でんでん、光石、神楽坂らがしっかりと固めている。おまけに吉高由里子と西島隆弘が出てくるのも笑った。このへんは自分のファンへのサービスもしっかりしているし、同時に園監督の意図を汲み取りやすいから常連俳優を使ったとも思える。

 ストーリー自体はありえないし、わからないところもあるのだけど、それでも、今の日本の状況にふさわしい傑作だと思います。
posted by 映画好きパパ at 07:00 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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