【ストーリー】
ある高校のバレー部キャプテン桐島は、学校の花形的存在だった。その桐島が部活を辞めるという噂が流れ、生徒たちは困惑する。
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【感想】
高校生の格差社会というのは、ある意味人生で一番理不尽な格差社会なのかもしれません。中学までは、あるいは社会や大学にでてからはいろいろな階層の人が混じり合って社会を構成しています。中学までは、学力、親の地位や収入なんてものがバラバラであり(公立の場合)、大学以降の場合は出身地や生まれ育った環境がバラバラです。しかし、高校の場合は、一定の地域の中から、一定の学力をもった生徒が集まっており、公立高校の場合、親の地位や収入の差というのも、高校生内のランキングにおいては重要ではありません。
高校生のランキングで重要なのは、イケメン・美女かスポーツができること。よくアメリカ映画なんかでは、フットボールのスターとチアリーダーが君臨する様子が描かれます。しかし、日本の映画やテレビドラマでこうした格差社会をもろに映し出すことって少ないですよね。たいていは恋愛ドラマであるからなんでしょうけど主人公と恋愛相手の回りを映し出すだけ。それで、高校の格差社会が最悪なのは逃げ場がないこと。
この映画が秀逸なのは、原作のこうしたリアルな高校の格差社会の雰囲気を踏まえたうえで、さらに一歩すすんだこと。映画のクライマックスのシーンやクラス最下層の映画研究会の前田(神木隆之介)とクラスの花形であるかすみ(橋本愛)との映画館で出会うシーンも原作オリジナルです。でも、こうしたオリジナルの部分がよりいっそう、階級社会の悲喜劇を強めているのですよね。
この映画でレベルの高い男女は、実は中心人物の桐島という太陽があって光る月のようなもの。実は最下層の前田たちのほうが、桐島とは無縁な存在だけに、自分でしっかりと独立している、という構造は本当によくできています。また、上流階級内でも、いろいろ考えているひとと、ただ、周りに付和雷同しているだけの人がいたりして、人間をよく観察しているなあとしみじみ。
僕は高校時代帰宅部で、クラスでは最底辺におり、ひとつもいい思い出はありません。ただ、人生で一番輝けたかもしれない時代に、何も自分でよってたつものがなかったのは愚かだなと、つくづく思います。もし僕が中学時代にこの映画をみていたら、おそらく自分の人生を変えることになっただろう、それだけの出来の良い作品でした。(角川シネマ新宿)