2020年04月14日

ポエトリー アグネスの詩

 韓国だけでなく、世界を代表する名匠イ・チャンドン監督の珠玉の一品。なにしろ、米国の批評家サイト、ロッテントマトで100点を取っている(全米の批評家がひとり残らず褒めた)のだから、ある意味、芸術映画の頂点といってもいいかもしれません。

 【ストーリー】
 生活保護を受けながら中学生の孫チョンウク(イ・デビッド)と暮らす老女ミジャ(ユン・ジョンヒ)。ある日、町のカルチャースクールで詩の講座をやっていることを知り、受講する気になった。子供の頃に、先生から詩を褒められたのを思い出したのだ。詩を書くのはその時以来なので、勉強しなければ書けないと思ったのだ。

 ところが、物覚えが悪くなった彼女は、医師からアルツハイマーの初期症状だと診断される。さらに、女子中学生ヒジン(ハン・スヨン)の自殺の原因がチョンウクたちから集団で性的暴行を受けたためということを知る。




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【感想】
 社会の弱者で、貧乏のなかに孫と遊ぶことにささやかな楽しみを見つけていたミジャが、加害者の家族という立場にたつ不条理さ。詩を書く事が楽しみで、物事を新しい面から見ていこうと張り切っているのに、言葉を忘れる病気にかかり、なおかつ、一番身近な孫ですら見えない皮肉さ。人生は決して思うようにいかないのだけど、それでも、懸命に生きる人の美しさ。

 ミジャには不幸が次々と降りかかってくる。周囲の人も、弱い老女だとしか見ておらず、一段下に扱われる。ヘルパーの仕事をすれば、体の不自由な老人(キム・ヒラ)に襲われる。息子の友人の父兄たちからは、「女同士のほうが話がわかる」とかいわれて、ヒジンの遺族との交渉を押し付けれる。けれども、ミジャは60数年間しっかりと生きてきたのだ。表面上は単なる老女でも、そこに至るまでの歩みがあり、他人の理不尽をしなやかにはねのける年の功もちゃんとある。老いるということはどういうことなのか、考えさせられました。

 副題のアグネスというのはヒジンの洗礼名。ミジャは詩を書こうと思い悩むうちに、アグネスへの共感というのが現れてくる。同じ虐げられる女性という点もあるのだろうけど、根底のところの精神が似通っていたのかもしれない。ラストの朗読シーンは、それまで淡々とした描写が続いていただけに、映画史に残る美しさではなかろうか。僕は詩というのがずっとわからなかったけれど、初めて詩が素晴らしいと思いました。

 イ・チャンドンの作品は皆、社会の底辺に生きる人たちをそっと暖かく、でも残酷な運命は変えずに見ていくBGMもつけず、美しい映像とともに、人間の行動をひたすらみせられるこの作品は、一瞬たりとも目を離すことができません。ある意味、観客に考えさせるので、解釈は人によって違うでしょう。

 ユン・ジョンヒは往年の大スターだけど、映画界を離れて久しい女優で、
貧しい老女としかみえません。他の俳優も地味な人ばかりで、韓流スターは一人もでていません。だから、興行的には韓国でも大失敗したけれど、映画を自分の糧にしたい人にとっては、見逃せない作品だと思います。映画館で見られなかったのが本当に残念でした。★★★★(DVD)
【2013年に見た映画の最新記事】
posted by 映画好きパパ at 07:45 | Comment(0) | 2013年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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