2020年04月20日

人生の特等席

 クリント・イーストウッドが久々に俳優として他人の監督作に出演した貴重な作品。一見すると王道の娯楽劇だけど、弱者へのいたわり、拝金主義への批判といった、最近のイーストウッド映画に共通の視点はしっかり入っており、味わい深い作品です。

 【ストーリー】
 大リーグ・ブレーブスのスカウト、ガス(クリント・イーストウッド)は、球界がコンピュータで選手を分析するような時代に、各地を渡り歩き自分の目で見る昔ながらのスカウト。フロントからは、化石のように思われている。娘のミッキー(エイミー・アダムス)は弁護士で、父親に愛憎半ばの感情を抱いている。

 ガスは目も悪くなり、球団は今年の結果がでなければクビにすることを考えていた。球団のスカウト部長でガスの友人のピート(ジョン・グッドマン)は、最近のガスが心配なので様子を見に行って欲しいとミッキーに頼む。ミッキーは高校野球のチームについて地方を転戦しているガスのもとへ赴いた。



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 【感想】
 だれもが思いつくのが「マネーボール」との違い。「マネーボール」では最新のデータ分析を駆使する一方、ガスのような昔ながらのスカウトのやり方は古臭いと切り捨てています。また、「マネーボール」では不要な選手はすぐにトレードにだす超合理主義的な発想だったのに、ガスはトレードになったり、引退した選手のことを息子のように気にかける。元選手で今はライバル球団のスカウトになったフラナガン(ジャスティン・ティンバーレイク)も、彼を実の親のようにしたっています。

 実は「マネーボール」の舞台は西海岸のオークランド。すなわち、ハイテク産業が盛んで、とにかく金儲けを狙って、弱者は切り捨てるという場所。一方、こちらの舞台は南部のアトランタで昔ながらの人情はきっちり残っている。この映画も昔ながらの伝統的なアメリカ的考えが勝利することになっています。実際、ブレーブスがこんなに温情的かはわかりませんが、オークランドアスレチックスが昨年地区優勝しましたが、ブレーブスはもう8年も優勝から見放されているんですよね。そこらへんも考えると、なかなか奥が深い。

 この映画で特徴的だったのが、ガス親子が移民やマイノリティに優しい目を向けること。ほとんどが白人のなか、スカウト仲間は黒人だし、ミッキーが見つける新人はスパニッシュ。ここらへんにも、イーストウッドの「グラン・トリノ」に通じる、多様な民族がアメリカを支えるという主張がはっきりみえました。イーストウッドは本当に、古き良きアメリカを体現してくれる人という感じがします。

 もう一つが疎遠だった父と娘の関係。仕事で多忙だった父に構われずに娘と距離があくというのは「レスラー」も思い出しますが、こちらはさらにひとひねりしてあって、ぎょっとさせられます。ミッキーがフラナガンをもしのぐ野球オタクというのも、なかなか構ってもらえない父親の気をひくために覚えたと思うと、彼女の心情を思ってじーんときます。

 あまりにも王道なストーリーで、評論家受けは悪かった。けれども、現在のハリウッドもデータを駆使して、大規模なSFアクション映画しかみられないのが大きな問題になっており、スピルバーグが悩んでいるというほど。そうした映画業界への現状へのアンチテーゼも、ガスが昔の映画が大好きという設定にも現れている気がします。★★★★(DVD)
【2013年に見た映画の最新記事】
posted by 映画好きパパ at 22:22 | Comment(0) | 2013年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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