【ストーリー】
田舎から上京して美大に通う菜都美(北乃きい)は、家が貧乏なため生活費に苦しみ、キャバクラでバイトを始めた。ボーイの良介(池松壮亮)に金を貸すが、彼は返済すると称して菜都美の家に上がり込み、いつの間にか同棲をはじめる。しかし、ボーイをやめて、毎日、働かないで捨て猫と遊び、生活費を菜都美にせびっている。
学校の成績もキャバクラでのバイトの指名順位も悪い菜都美だが、イラストを書き続ける。先輩ホステスの吹雪(瀬戸朝香)の幼い娘、沙希(谷花音)が、菜都美のファン第一号になり…
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【感想】
西原理恵子の自伝的な映画というのはこれまでなんども映画化やテレビ化されており、どこかで聞いたようなエピソードも多い。それでも、弱者への暖かさというのは本当に心地よい。大きなことばかり言ってDVと借金ばかりこしらえた菜都美の義父(岸部一徳)、男狂いの故郷の友人みさ(高山侑子)、そして何より、女に片っ端から借金して、ヒモとして生きている良介。弱者や悪人として切り捨てないので、それぞれの弱さを受け入れながら、ダメな人間でも良いことはあるよ、と受け入れてくれる。
大金持ちで出世して、私立に子供を入れてなんていう、世間のセレブとまったく無縁でも幸せはきっとあり、むしろほっとした幸せのほうが、はかない分尊い。義父にしろ、みさにしろ、良介にしろ、不幸な人生のなかで、幸せなのはほんのわずかな時間に過ぎない。でも、生きるってつらいからこそ、幸せがうれしく、貴重なのでは、と思わせてくれました。何より、生きていて、歩き続けていれば必ずどこかで良いことはあるだろう、と見ているこちらを勇気づけてくれます。
北乃きいは西原理恵子を演じるには美人すぎるかな、とも思ったけど、実際見てみると結構ブス顔を披露してくれて熱演。ダメ男、ダメ女とも自然体に向き合える菜都美になりきってました。考えてみると、彼女はスキャンダルで順風満帆だったキャリアに傷をつけています。そういう体験もあって、こうした演技ができるようになったのかなと思ってしまいました。特に初めて良介と男と女の関係になる(おそらく初体験だった)様子を顔だけで演じたのは絶品。
また、池松の捨てられた子犬か子猫のように、女の子の心の隙間に入る様子は絶品。決して悪人でないけど、ダメな男と、それにはまる女っているよね。キャストでは黒沢あすかが善人を演じていたのがツボに入りました。
森岡利行監督は、まったく別キャストで(高山侑子だけはなぜか続投)上京する前日譚の「女の子ものがたり」を撮っており、そちらを見ても楽しめます。難点は、西原がカメオ出演で目立ちすぎたのと、小沢真珠の演じる人気作家が原西えりこという、西原をもじったような名前だったことでしょうか。なんか、しんみりした映画で、内輪ウケをするとちょっとささくれ立ってしまいます。それでもとても良い映画です。若者にも、年配者にもおすすめです。★★★★(渋谷シネマライズ)