2020年05月06日

そして父になる

 カンヌ映画祭で審査員賞を受賞したのも納得の上質な映画です。子供を持つ親にとって、親子の絆とは何かを、ずしりと突きつけられます。

 【ストーリー】
 建築会社のエリートビジネスマン、良多(福山雅治)は、妻みどり(尾野真千子)と6歳の息子慶多(二宮慶多)とともに高級マンションに暮らしている。慶多は私立小学校の入試も合格し、順風満帆な人生を歩んでいた。

 だが、慶多の生まれた病院から、思いもよらぬ連絡がくる。同じ日に生まれた斎木ゆかり(真木よう子)の息子、琉晴(黄升R)と取り違いがあり、慶多は実の息子ではないというのだ。ゆかりの夫、雄大(リリー・フランキー)は小さな電気屋で、貧しい生活をしている。6年育てた息子か、それとも血を分けた実の息子か、2組の家族に厳しい選択が突きつけられる。



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 【感想】
 是枝裕和監督らしい、ドキュメンタリーといっても良いナチュラルな作品で、子役には脚本を渡さず、自由に演技をしてもらったそうです。そのため、2組の家族の苦悩が、まるで本物のようにリアルに感じられ、例えば、福山が息子と触れ合うシーンも、2人がまるで本物(?)の親子のように感じられました。

 大多数の親が我が子を可愛いと思うでしょう。しかし、取り違えに気づかなかった。子供を産んだみどりはそのことを苦悩します。それなのに、良多の心無い、悪気はないだろう一言で、母親と父親との温度差がくっきりと出てしまい、夫婦に亀裂が走ります。ただ、タイトルにあるように、この段階では良多は父親として成熟していなかった。母親は子供を産むとともに母親になれるのに、父親はいつになったら父親として成熟できるのか、考えさせられました。

 良多はエリートサラリーマンですが、その分、人の痛みに鈍感です。それが嫌味に見えなかったのは、福山の演技力とともに、後半になってあかされる良多の生い立ちにありました。このあたり、説明をそれほどいれず、ナチュラルに流れてしまうので、見落とすとわからなくなるかもしれません。けれども、なぜ、良多が子供に対してきちんと接することができず、ただ、子供を受験させるとか、ピアノを習わせるとかにこだわったか、といった理由が浮き彫りになっていきます。そういう意味では、血縁としての父以上に、精神的に父になるための苦闘と、その曙光の物語といっていいのでは。

 また、一見すると都会で冷たい良多の家族より、子沢山で貧しくても明るく暮らせているゆかりたちの方が幸せにみえるかもしれません。けれども、ゆかりたちが金に汚い部分をちらっと見せたり、あるいは、風呂のシーンなど、単純に彼らを善良な市民と描いているわけではない、といったところに是枝監督のバランス感覚を感じました。また、ラストも考えさせるもので、私はお気に入り。映画館でも泣いている人が何人もいました。

 俳優陣は福山が「真夏の方程式」を上回る見事な演技をみせている一方、リリーが対照的なガサツな男になりきっており、2人の対比がくっきりとしていました。女性偉人も「最高の離婚」で共演した真木と尾野が、またもや芸達者なところを息もぴったりにみせてくれました。特に、真木について、僕はそれほど演技力を評価していなかったのですが、ウインクのシーンにはやられました。

 このほか、セリフはないけれど、ピエール瀧の存在感、夏八木勲、風吹ジュン、國村隼といったベテラン陣の渋みのある演技など、上手い人のアンサンブルは満足いくもの。ただ、残念だったのが、予告などでちょっと見せすぎのところがあったことです。白紙の状態でこの映画をみれば、どんなに良かったか。それでも今年のベスト候補の1本といって間違いないでしょう。★★★★★(TOHOシネマズ渋谷) スピルバーグのドリームワークスがリメイク権を買ったみたいですが、ハリウッド版は見たいような、見たくないような…
【2013年に見た映画の最新記事】
posted by 映画好きパパ at 07:57 | Comment(0) | 2013年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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