2020年05月08日

飛べダコタ

 非常に真面目に作られた作品で、埋もれるのが惜しい。あまりにも真面目すぎるので、つまらない教育映画のように思われるのかもしれません。でも、誠実に作ってある作り手の態度はこちらに伝わりますし、邦画の戦争を扱った最近の作品のなかでは上位に来ます。

 【ストーリー】
 1946年1月、新潟県佐渡島に英国軍の輸送機C47(ダコタ)が不時着した。乗員、乗客は無事だったが、ダコタは砂浜に埋まり、大きく破損した。英国軍は乗員に修理して再び飛ばすように命じるが、佐渡島には機材も滑走路もない。

 一方、村人にとってもつい半年前まで鬼畜米英と恐れていた英国軍兵士を間近にみるのは初めてだった。村長の森本(柄本明)は、自分の旅館に乗員を止め、修理を手伝うことを申し出るが、娘を空襲でなくした警防団長の高橋(ベンガル)を初め、敵視する村民も多かった。村長の娘、千代子(比嘉愛未)は、「これからは平和の時代」と村民の先頭に立って、協力を呼びかける。しかし、千代子の幼馴染で、軍隊で片足を失った健一(窪田正孝)は、憎しみを募らせるのだった。



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 【感想】
 戦争からわずか半年。軍国日本から平和日本へ鮮やかに変わり、やがて高度成長へとつながっていきます。しかし、その影に忘れられた人たちもいます。戦争で家族を失ったり、大怪我をしてきた人達は、その思いをどこへぶつければ良いのか。そうしたこれまであまり取り上げられなかった人の気持ちを丁寧にすくいあげており、感心しました。

 最初は英国兵を警戒していた村人たちも、千代子ら若い世代や子供たちから仲良くなっていきます。また、村長の「佐渡には天子さまから無宿人まで流されてきて、みんな暖かくもてなした。今度はイギリス兵が流されてきたのでもてなすのは、佐渡の人間の心意気だ」という発言に、大人たちも警戒をゆるめていきます。こうした流れを非常にゆっくりと描いているので、村人や英国兵たちの心の動きがよく分かりました。

 その一方で、健一が、英国兵と子供の交流を図ろうとする校長(螢雪次朗)に、「俺たちは英国兵を殺せとあんたから教わったんだ」と、思いをかみ殺すかのように訴える場面は、考えさせられました。こうした人をきっちり描くことで、単なる美談に終わらせない良い脚本だったと思います。また、息子が戦死した女性(洞口依子)が恩讐を超えて英国兵と交流する場面は本当に心を打ちました。戦争責任がだれにあるかについての村長の話は、ややとってつけた感がいなめませんが、村人に「そんなのわからない」と反応させるのも、押し付けがましくありません。

 反戦映画といえば「少年H」のように、完全無欠の反戦主義者が、これでもかと戦争の悲惨さを訴えるものや、戦場(空襲、原爆などの場面も含む)での悲劇的な行動を通じたものが多かっただけに、戦争が終わったあとも庶民に傷跡が残ったことを表し、そのうえで、やはり戦争は絶対に良くないものだと静かに呼びかける本作は素晴らしい作品です。冬の佐渡の荒涼とした風景もよくとらえていました。

 俳優では渋いベテランが多い一方で、比嘉の凛とした美しさと、窪田の演技力の高さは特筆すべきものでしょう。比嘉はこの年代の女優で、一番、顔立ちが整っているとともに、心優しい人物の役が最もふさわしい女優ではないでしょうか。彼女だけが赤い和服を着た記念写真が公式サイトにアップされていますが、華やかさと温かみを兼ね揃えた稀有の存在になりました。彼女の映画の代表作になったでしょう。また、窪田の何かにとりつかれたような表情と、つきものが落ちたような場面の違いは、素直にすごいと思いました。テレビでなかなかこうした役が回ってこないのはもったいないですね。

 ここまでほめまくってきたのですが、真面目すぎるうえ、実話をもとにしているだけに、それほど起伏がある話ではなく、途中で退屈するかもしれません。それでも、子供をはじめ、多くの人に見てもらいたい作品でした。★★★★ (TOHOシネマズららぽーと横浜)
【2013年に見た映画の最新記事】
posted by 映画好きパパ at 06:26 | Comment(0) | 2013年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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