【ストーリー】
高校の国語教師ジェルマン(ファブリス・ルキーニ)は、文学に関心のない生徒たちに教えることに飽き飽きしていた。ところが、作文の課題で同級生の家族のことを書いたクロード(エルンスト・ウンハウアー)の見事な文章に惹きつけられる。内容は他人の家族の秘密をのぞき見するようなもので、作文の最後には「続く」と書かれていたのだ。ジェルマンの妻で画廊を経営するのジャンヌ(クリスティン・スコット・トーマス)も、作文の内容に関心をもつ。
ジャルマンは放課後クロードを呼び出し、文章の書き方を教える個人授業をはじめる。やがて、彼の文章はより危険なものになり、同時に、ジェルマンに対しても、要求をつきつける。
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【感想】
非常にざらっとした作品でしょうか。大人の苦いユーモア混じりで、人間の愚かさ、虚しさといったものをだしていきます。ジェルマンは生徒のことを「ケータイとピザにしか関心がない」とバカにして、まともに授業を教える気がありません。そこへ、クロードという才能のある生徒が出てくると、まるでベタベタの甘やかした親のようにつきまとってしまいます。
また、ジャンヌも美術家で、芸術家夫婦のはずなのに、ジェルマンは自分にモノを書く才能がないことが心の奥で傷になっています。ジャンヌも、わけのわからない現代美術を、まるでマニュアルのように紹介するだけで、本当に美術を愛しているという様子はみえません。現在の自称文化人がどのように芸術につきあっているか、そして、その形骸化した様子が、いわゆる進んでいるカップルの空虚な関係をも浮彫にしています。
一方、クロードは家族に恵まれないせいか、同級生のラファ(バスティアン・ウゲット)の家庭に入り込もうとします。ごく普通の中産階級ですが、父(ドゥニ・メノーシェ)と息子の中が親密な一方、母(エマニュエル・セニエ )は平凡な毎日に退屈しています。そこに異分子である美少年が現れて、家族に動揺が走ります。ラファ一家は芸術に関心なく、スポーツや内装といった即物的な一家であるというのも、ジェルマン家との対比になっており、面白かった。
エルンスト・ウンハウアーは新人俳優ですが、ゾクッとするような美少年ですね。これにたいして、クリスティン・スコット・トーマス、エマニュエル・セニエといった一昔前のセクシー女優がなんともなまめかしい姿を見せており、このへんはフランス映画らしいというところでしょうか。重要な場面でセリーヌの「夜の果ての旅」が出てくるなど、欧州文学を知らないと分かりにくい場面があり、こうした知識があればもっと楽しめたでしょうね。★★★(ヒューマントラストシネマ有楽町)