【ストーリー】
2004年、司法浪人中の健太郎(三浦春馬)は祖母・松乃の葬儀のときに、祖母は再婚であり、自分の本当の祖父は特攻隊員として戦死していることを知る。フリーライターの姉の慶子(吹石一恵)とともに、祖父の久蔵(岡田准一)のことを調べることにする。
「あいつは腕が立つのに海軍一の臆病者だ」と祖父を非難する戦友が多く、健太郎はがっかり。しかし、健太郎と同じ小隊で戦った井崎(橋爪功)から、思いもかけない事実を教えられた。それは、久蔵が妻の松乃(井上真央)と生まれたばかりの娘・清子に必ず帰ると約束したからだった。では、なぜその久蔵が特攻に加わったのか。健太郎はさらに調べるうちに、思いかけない事実を知る。
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【感想】
特攻は隊員たちの尊い死とはうらはらに、パイロットの技倆や日米の技術力の差(レーダー、VT信管)などからいって、9割以上が目標に達する前に撃墜されたといわれます。映画の中でもいわれますが、10中9死ぬ作戦なら戦争だから仕方がないが、必ず死に、しかも成果が薄い作戦に、将来の日本を担うべき若者を大勢犠牲になったのでした。
さらに道義的にも大きな問題があると私は思います。特攻を具申した大西瀧治郎中将は終戦時に自決して責任をとったものの、それを許可した及川古志郎軍令部総長や、現場の責任者として「あとから私も行く」といって送り出した寺岡謹平海軍第3航空艦隊司令長官、富永恭次陸軍第4航空軍司令官は戦後も平然と生き残りました。当時の逸話として、特攻を命じられた航空隊が、計画した参謀とともに特攻することを具申したところ、二度とこの航空隊に特攻の命令がこなかったというものがあります。つまり、純真な若者を犠牲にしながら、偉い人たちはのうのうと生き残ったのです。
今までの特攻に関する映画では、こうした視点がなく、犠牲になった隊員たちが可哀想だと泣かせる作品ばかりでした。しかし、本作は極めて現代的、冷静な判断を持っている宮部久蔵を主人公にしているため、特攻の問題…も浮彫にしているのが白眉といえましょう。もうちょっと、より上層部を批判してほしかったのですが、そこまでいくとイデオロギッシュと思われたのかもしれません。同時に、特攻を自爆テロと安易に結びつけるような視点もきっちり批判していて、うまくバランスがとれていました。
さて、映画の中身ですが、俳優については文句いうことなし。夏八木勲、山本学、田中泯といったベテラン俳優たちはもとより、現代パートの三浦、吹石、そして過去パートの新井浩文、染谷将太、濱田岳といった若い俳優も、当時の雰囲気をよく出していました。もちろん主役の岡田は、はまり役。来年の大河ドラマも期待です。また、サザンの主題歌も盛り上げてくれますね。
また、山崎貴監督ということもあり、SFXは頑張っています。空母赤城のシーンなどは、今までの日本映画にない迫力ぶりでした。ただ、それでもハリウッドに比べると作り物感が出てしまうのは、予算の差なのでしょうか。日本の技術は世界最先端だと思うので、SFX映画も、もっと頑張って欲しいものです。特に、ラストのSFXはちょっとなんというか…。もう少しやりようがあったのでは、という感じ。それでも、戦争の知らない世代に戦争を伝えようという工夫は感じられました。★★★★(TOHOシネマズ渋谷)
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