2020年06月18日

ルース・エドガー

 アメリカで黒人差別への抗議活動が広がっていますが、そんな単純に解決できるわけでないことを浮き彫りにした問題作。何とももやっとした感じがリアルさを感じます。

 作品情報 2019年アメリカ映画 監督:ジュリアス・オナー 出演:ケルヴィン・ハリソン・Jr、ナオミ・ワッツ、オクタヴィア・スペンサー 上映時間109分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマズ港北 2020年劇場鑑賞94本目

 【ストーリー】
 アフリカの紛争地で産まれ、アメリカの白人夫婦エイミーとピーター(ナオミ・ワッツ、ティム・ロス)の養子となった少年ルース(ケルヴィン・ハリソン・Jr)。成績優秀で陸上部のキャプテンを務め、弁論大会の学校代表に選ばれるなど、高校でも人気者になっていた。

 しかし、宿題で武力紛争を支持するかのレポートを出したため、担任のハリエット(オクタヴィア・スペンサー)はロッカーを捜索。違法な花火を発見する。ハリエットはエイミーに連絡をとり、エイミーはハリエットのプライバシーを無視したやりかたに反発するも、ルースに疑念を抱き始めるのだった… 



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 【感想】
 紛争地でおそらく少年兵だったという過去をなんとなく恐怖に感じているとともに、白人リベラルとしてそんな子供を養子にしたこと自体を偉いことだと思っている両親。黒人の生きづらさをしっているがゆえに、模範的な生徒を作り出し、そこからはみでることを許さない偏狭な教師。決して悪い人ではなかったはずなのに、ルースという個人を観るのではなく、自分たちの型にはまった概念を押し付けようとしていることから、自体は悪化していきます。

 ハリエットは病気の家族をもち、高校教師として優秀だという評判を得るためには努力をしてきたのでしょう。でも、自分のやり方がすべてに通用するというのは間違いで、教師だったら生徒一人ひとりに寄り添わなければいけなかった。日米の違いがあるけれど、こういう教師はどこにでもいます。ハリエットが白人でなく黒人だということも、この映画に深みを与えます。

一方、エイミーとピーターもルースと向き合おうとせず、というか自分自身の心にも向き合おうとしませんでした。生きとった当初にルースのカウンセリングで苦労したといセリフがありましたが、カウンセリングを含めてアメリカ流の自分の正義を押し付けるのがはたしていいのか、これまたリベラルな白人だけにその独善性は苦いものがあります。ルースがなぜルースという名前なのかということですら、独善性がみえてしまいます。エイミーが問題を先送りしたり、ピーターが本当は黒人の養子が嫌だったという本音が漏れたりするのをみると、人間ってなんて弱いものなのか。

 両親と担任がルースのことをみていないのは悲劇ですが、でも、そういう境遇の子供はよくいるわけです。ただ、ルースはとびきり優秀で、出自も複雑というところに、難しさがあった。さらにスクールカーストの問題もあるわけで、ルースは黒人の同級生から「お前はオバマだから」といわれるシーンがあり、名誉白人で先生から褒められる黒人と、見捨てられた貧乏な黒人の違いなんてものがあることがわかります。

 ラストもこうだったと想像はつかせるものの、ばしっとした答えはでません。それでも、観客に人種問題だけでなく、親子や学校の在り方というところまで深く考えさせるにはふさわしい演出でした。ナオミ・ワッツとティム・ロスは、ファニーゲームUSAでも、一見幸せそうでどんどんドツボにはまる夫婦を演じていましたが、仮面をかぶった高級そうな白人夫婦にぴったりなのかもしれません。
posted by 映画好きパパ at 07:19 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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