2020年07月02日

冷たい熱帯魚

 今、一番注目されているといっていい園子温監督の新作。猛毒エンターテイメントをうたっているだけあり、エログロ満載の18禁だけど、146分が一瞬に思える語り口のうまさは今回も健在でした。

 【ストーリー】
 静岡で小さな熱帯魚店を営む社本(吹越満)は娘の美津子(梶原ひかり)と若い後妻の妙子(神楽坂恵)の仲が悪く、家庭は冷え切っていた。ある晩、美津子がスーパーで万引きして捕まった。店は警察を呼ぼうとしたが、店の常連客の村田(でんでん)が仲裁にはいり、その場はおさまる。

 村田は大規模な熱帯魚店を営んでおり、同業者のよしみということで、美津子を住み込みの店員として引き取り、社本にも、共同で事業をしようと持ちかける。村田の押しの強さと口のうまさに、つい従ってしまう社本。だが、村田と妻の愛子(黒沢あすか)は、カネをだまし取っては被害者を殺害する極悪な殺人鬼だったのだ。娘を実質的に人質にとられた社本は、村田のいうがままに、犯行を手伝う羽目になる。



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 【感想】
 カネのために人体はバラバラにされ、愛情のかけらもなく動物の本能のような交接シーンがえんえんと続く、「愛のむきだし」ならぬ「欲望のむきだし」映画。けれども疾走感あふれるストーリーのため、残虐なシーンもそれほど気にならず、むしろグロテスクの中におかしみすら感じてしまいました。ただ、残虐シーンになれていないと、当分、焼き肉やホルモンは食べられなくなると思います。

 1993年の埼玉連続愛犬家殺人事件をベースにしており、夫婦で被害者をバラバラにして死体を消却してばらまくことを「透明にしてやる」ということなどは、モデルとなった事件の通り。だから、社本のような小心で平凡な男が、村田の悪のオーラに負け、使い走りになってしまうというのも、現実にも十分あることで、北九州の一家監禁連続殺人事件をも想起してしまいました。殺人まで至らなくても、詐欺師の手口としてはいかにもオーソドックス。

 その社本が、最初は村田に脅され、そのうち犯行になれ、人格すらもひょう変していくのに併せて、オープニングの食事のシーンにあらわされる妻や娘にも馬鹿にされる人間から、妻子を支配しようとするように変わっていく。村田のようなシリアルキラーよりも、社本のような小心なものこそ、実はそのへんにいそう、というのも怖い話。

 ひょう変前とひょう変後を使い分けた吹越もよかったけど、なんといっても、これまで脇役で実直な職人といった役柄が多かったでんでんが、一見善人そうにみえるけれど、実はいっちゃったシリアルキラーというのを見事に演じてました。こんなのがそばにいて、まくしたてられたらついつい、ぺースに巻き込まれてしまう。さらに、渡辺哲、諏訪太郎、三浦誠己といった顔も演技も一癖もふた癖もあるおっさんたちが大活躍。

 女性陣の特徴をうまく撮るのも園映画の特徴で、黒沢あすかのはじけっぷりとひょうへんぶり、神楽坂恵の怠惰さとエロさ、そして、「紀子の食卓」のころの吉高由理子を思い出させる梶原ひかり、とそれぞれ見事にさばいていました。

 エログロ、極悪人を描いているのに、嫌な気がしないのは、僕の中にある負のオーラをそのまま体現しているからか。富士山の清涼な姿やプラネタリウムの星空をいかにも的に出しているのも、人間の本性なんて汚くドロドロしたものだということを言いたかったのだろう。賛否両論ある作品だが、僕はものすごくおもしろかった。ただ、「愛のむきだし」と違って、見終わったあと心に残るものがなかったかな。★★★★★(TOHOシネマズららぽーと横浜)
posted by 映画好きパパ at 20:29 | Comment(0) | 2011年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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