【ストーリー】
1930年代、英国王子のヨーク公(コリン・ファース)は、どもりでひっこみ思案となり、人前でまともにしゃべることができなかった。エリザベス妃(ヘレナ・ボナム=カーター)は、ヨーク公の身を案じ、さまざまな医者を頼るが、症状は改善されない。
わらにもすがる思いで、2人はロンドンの下町のぼろオフィスで、言語聴覚士をするローグ(ジェフリー・ラッシュ)を訪れる。ローグは変わった治療法を提案し、自分を信頼するなら治療をするという。最初は反発したヨーク公だが、治療に効果がでていることに気づき、彼を信頼するようになる。やがて、英国王ジョージ5世(マイケル・ガンボン)が死去し、ヨーク公の兄のエドワード8世(ガイ・ピアース)が即位するが、エドワード8世は女性問題で退位。だれも予想しなかったヨーク公がジョージ6世として王位につく。そのころ、ヒトラーのナチスドイツはヨーロッパの侵略を始め、英国はドイツに宣戦布告。ジョージ6世は、国民に対して、開戦の演説をラジオで生中継しなければならなくなった。
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【感想】
英語ができて、イギリスの歴史に詳しい人ほど、この映画を楽しめるだろうと、英語が苦手な僕は残念に思った。たとえば、ローグはオーストラリア出身なので、英国人からみれば、なまりがあるのに、それが英語の発音の教師をするおかしさ、というのは、なまりを聞き取れない僕とすれば、ピンとこない。また、エドワード8世の「王冠をかけた恋」についても、通り一遍の知識しかないし。それでも、王を、リーダーと置き換え、ハンディを乗り越えて、苦難に挑戦する物語ととらえれば、大勢の人にあてはまるから、共感しやすい。
また、王という高貴な立場の人間が、植民地出身の平民であるローグと友情を結び、ときにはローグに厳しい言葉で叱咤激励されるというのは、英米のみならず、日本人にとっても受け入れやすいストーリー。個人的にはジョージ6世が王位につく前とあとの、娘(現エリザベス女王!)とのやりとりは、ジーンときました。コリン・ファースのオスカー受賞も納得の演技だし、落選したけど、ジェグリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーターといい役者をそろえた甲斐があります。
さらに英国の映画らしいユーモアたっぷりの描写(予告編でもあるが、王妃がヨーク公のお腹の上に座って発声練習されるとか)がまぶされ、題材としてはドラマティックではない(直接的に人は死なないし、猛烈な恋愛もないし、主要登場人物はおっさん、おばさん)のに最後までハラハラしながらみられるというのは、うまいつくりになっています。クライマックスの開戦スピーチは、今、言葉が軽んじられている日本の政治家に爪の垢でもせんじてのませたいような、緊迫感と努力のたまもの。わざといれたらしいBGMも含めて、ここ何年かのオスカー受賞作品では一番感動的な場面だと思う。
でも、結局、史実をおっているわけだし、巧くまとまっているなあ、というのは長所でもあり、伸びしろがなくなっている気が正直します。さらに多くのものを求めてしまうのかも良い映画だからなのは間違いありませんが。★★★★(TOHOシネマズ六本木)
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