作品情報 2020年日本映画 監督:松居大悟 出演:加藤清史郎、醍醐虎汰朗、蒔田彩珠 上映時間108分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマ港北ニュータウン 2020年劇場鑑賞136本目
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【ストーリー】
熊本の高校生マサオ(加藤清史郎)は中学生の時に熊本地震で被災し家族と仮設住宅暮らし。部活のハンドボールも地震を機にできなくなっていた。毎日無気力な高校生活を過ごしていたマサオは、ハンドボール部時代の「映える」写真をインスタグラムに投稿したところ、いいねが50もついて驚く。
気を良くしたマサオは友人の岡本(醍醐虎汰朗)とハンドをしているふりの脚色した写真を#ハンド全力のハッシュタグをつけて次々に投稿。いつしか熊本復興のムーブメントのようになる。マサオの通う高校は女子ハンド部は全国レベルだったが、男子ハンド部は部員が部長の島田(佐藤緋美)一人で廃部寸前だった。スカウトされたマサオと岡本はフォロワーにうけるために男子ハンド部に入部する。一方、まじめにハンドをしていた女子ハンド部の黒澤(蒔田彩珠)は、撮影ばかり熱心で真剣に練習しない男子にいらだちを覚えるのだが…
【感想】
インスタを真正面から取り上げた邦画ははじめてみました。今の高校生たちがいかにインスタを重視し、ナチュラルに溶け込んでいる姿がよくわかります。インスタ映えするために写真を工夫し、やらせ演出もいとわない姿は、今の日本ではふつうのことでしょう。でも、見も知らない人からいいねをもらい、フォローをしてもらうために、精神をすりへらし、マスコミに持ち上げられたり、炎上したりというのも、いかにもありそうなことです。
そんななか、SNS嫌いの黒澤の存在が、物語上のテクニックだけでなく、本当に重要なことをマサオたちに教えてくれます。SNSは否定するべきではないし、力も絶大です。でもコミュニケーションツールにすぎず、それに振り回されるのはおかしい。何より、リアルを充実させ、つながりを大切にしなければ無意味だということを。
一方、災害で日常を奪われた喪失感というものにもきっちりとむきあっています。ずっと続くと思っていた日常が断ち切れてしまった。マサオが何にでも関心がなくなったのもそうですし、故郷に戻りたいと思いつつ、仮設住宅で孤独死する老人もでてきます。マサオの親友でハンド部のエースだったタイチ(甲斐翔真)は一家で熊本を離れざるをえず、そのことが心の傷に残っています。一方で、単に頑張れともてはやすマスコミやSNSにいらっとくる描写もあります。女子ハンド部のエース七尾役の芋尾悠と部員の溝上役の渕上晃は熊本出身であり、そういう地元の雰囲気を同世代の俳優にうまくつたえたのでしょう。
そして、いかにも地方の高校生にみえる幼さがいい。加藤、醍醐、鈴木福といった面々は年齢もそうですが、朴訥さがはまっています。女性陣も芋生、蒔田、田中美久ら美少女をえがいていますが、きちんとあかぬけないようにしており、田舎のちょっとかわいい女の子という感じにぴったり。高校生を描いた作品なのに、年齢もさることながらオーラからとても高校生にみえない作品が大半のなか、女子への子供っぽいアプローチを含めて、うまくはまっていました。
また、大人の配役もうまくはまっています。マサオの両親役の田口トモロヲ、ふせえりがこれまた地方のよくある家庭をだしていますし、兄役の仲野太賀と兄の彼女役の志田未来のハイテンションで無遠慮だけど抑えるところをきっちりとみせるのもいい。何より男子ハンド部顧問役の篠原篤のいい加減さと、初登場のときはジャージのため生
徒にすらみえた女子ハンド部顧問役の安達祐実の絶妙のバランスがすばらしい。青春映画って、周りの大人の存在が重要だと思ってますが、本作の大人たちはパーフェクトに近い。「日本で一番悪い奴ら」で存在感を見せたデニスの植野行雄もいい味を出していました。
今年は熊本の水害被害を受けています。売り上げの一部は被災地に寄付されるそうでその点からも多くの人に劇場で見てもらいたい作品です。
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