2020年08月17日

ディック・ロングはなぜ死んだのか?

 オフビートなブラックコメディで、タイトルからして人をくっています。突然の出来事に登場人物がみんな慌ててドツボにはまっていくのは、結構リアルかも。

  作品情報 2019年アメリカ映画 監督:ダニエル・シャイナート 出演:マイケル・アボット・Jr、ヴァージニア・ニューコム、アンドレ・ハイランド 上映時間108分 評価★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2020年劇場鑑賞147本目 



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 【ストーリー】
 田舎町で中年になっても売れないバンドを組んでいるジーク(マイケル・アボット・Jr)、アール(アンドレ・ハイランド)、ディック(ダニエル・シャイナート)の3人組。ある晩、練習のあと羽目を外しすぎて泥酔、大麻パーティーで盛り上がったうえ、あることをしたため気づくとディックが血だらけで倒れていた。慌てて病院に連れていく2人だが、このままだと自分たちが逮捕されてしまうと恐れて、病院の玄関にディックを放置したうえ、身分証を隠してしまう。

 だが、ディックはすでに死んでおり、身元不明の殺人事件として警察が捜査に乗り出した。一方、朝から挙動不審の態度をとりまくるジークに妻のリディア(ヴァージニア・ニューコム)は疑問を感じる。

 【感想】
 なぜディックが死んだのか、ジークたちが必死で隠そうとしたのかはラストのほうで明らかになります。それまで観客は、犯行を隠そうとしてじたばたしつつジークとアールの馬鹿さ加減をシニカルに見守ることになります。実際、プロの殺し屋とかでなく、酔っぱらったときにひどいことをしただけのため、証拠は残しっぱなし。さっさと正直に警察に話したほうがよほどましなのに、なまじ中途半端に偽装工作をするから、本人も周囲はそれに振り回されることになります。

 その警察も保安官(ジャネル・コクラン)は認知症の気配がある老婦人、部下は書類仕事しか経験のないアシスタントの女性(サラ・ベイカー)のでこぼこコンビ。徹底的な証拠や証言の矛盾にその場に気づかず、見ているこっちが突っ込みたくなります。これまで重罪の起きたことのないような田舎町でいきなり殺人事件とかなったら、慌ててしまうのだろうけど、こういう場合って州警察とかFBIに応援を頼まないんですかね。この的外れな捜査官とジークのかみ合わないやりとりも、ブラックなコメディです。

 一方、かわいそうなのはリディアと幼い娘のシンシア(ポピー・カニングハム)。とくにシンシアはこんなろくでもない父親にもかかわらず素直な女の子に育っているだけに、成長するに伴いトラウマになりそう。純真な幼女の疑問が、父親の証言の矛盾をひっかきまわすというのは面白い構図なのかもしれないけど、同じ娘をもつ父親の僕としてはやりきれません。

 また、アメリカの田舎町のくずぶった雰囲気がぷんぷんしているのも、この映画の特徴。大都会だったらそもそもこうした騒動にはならなかったでしょうし、アメリカの原風景ともいえる田舎町の閉塞性って、案外、日本の田舎町とも通じるものがあると思ってしまいました。

 監督のダニエル・シャイナートは「スイス・アーミーマン」というとんでもない変化球で映画監督デビューしましたけど、本作も監督自身が被害者を演じたうえ、コーエン兄弟を彷彿とさせるような変なテイストの作品でした。
posted by 映画好きパパ at 06:57 | Comment(2) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
まさかのオチが「ディック・ロング」…(苦笑)
Posted by 西京極紫 at 2020年08月27日 14:53
コメントありがとうございます。
英語圏の人は大うけだったでしょうね
Posted by 映画好きパパ at 2020年08月27日 16:20
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