作品情報 2020年日本映画 監督:豊島圭介 上映時間108分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズシャンテ 2020年劇場鑑賞157本目
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【ストーリー、感想】
1969年、右派の作家三島由紀夫は東大の学生運動の中心、全共闘から討論を申し込まれる。場所は東大の駒場キャンパスの900番教室。安田講堂事件の敗北から立ち直ろとする全共闘は、著名作家の三島を血祭りにあげることで運動を盛り返そうとしていた。これに対して三島は説得を試みようと正面から議論を繰り広げる。当時の映像を唯一保存していたTBSの映像や、当時の参加者、三島が主催した右派の学生団体盾の会の元会員、そして、作家の平野啓一郎、瀬戸内寂聴といった三島への思いのある識者へのインタビューも行われました。
僕が生まれる前のいわば歴史上の時代なので雰囲気はわかりませんが、当時、学生運動の関係者は日本に革命がおこると本気で信じていたみたいです。一方で三島由紀夫もその危険を感じて、武力革命が起きたときの盾になるために楯の会を作ってました。だから互いに真剣な討論で、文字通り命がけになっています。
ところが討論の内容は高度な知性の遊戯というべきでしょうか。自然とは何か、存在とは何かという哲学的な内容がほとんどです。古今東西、革命というのは権力者の横暴に貧困層をはじめとする被支配者が反発するというものです。ところが、この討論では日本の貧困がどうなっているのかとか、自民党政権がどう腐敗しているのかといった現実的な話は皆無です。
特徴的だったのが天皇制をめぐる議論です。三島のいう天皇制は、昭和天皇そのものではなく、日本の文化そのものの抽象的なことなんだろうけど、当時、討論会に参加した元全共闘の4人が、50年たった今でも三島のいう天皇の意味を異なって理解しているのです。話が抽象的すぎて頭がいいのはわかるのだけど、そもそもコミュニケーションはとれていなかったのではないか。三島と東大生という間ですらそうですから、革命に必要な民衆に彼らの言葉が届くわけがない、エリートの言葉遊びとおもえてしまいました。
ただ、当事者は必死です。熱意、敬意、言葉をもってあたれば世の中が変わると本気で信じていた。だから、三島も学生たちを揶揄するようなことはしない。大人としての意見をユーモア交じりでだしながら、展開していく。最近はSNSもリアルな討論も、熱意、敬意、言葉がなさすぎるから、この伝説の討論をみると、まさに日本が大きく成長しようとしていた時代だということがよくわかります。
また、当時若者のカリスマナンバーワンだった三島だけでなく、全共闘の面々も、イケメンで今だったらタレントになってもおかしくないカリスマがあります。こうしたキャラがたっている登場人物の丁々発止は面白い。タバコを吸いまくっていたり、討論に女性が出ていなかったりという時代性も含めて、昭和の高度成長期とはこんなものかという雰囲気がよく伝わってきました。ホラー畑の豊島圭介が監督というのも意外。
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