2020年09月13日

宇宙でいちばんあかるい屋根

 「新聞記者」で日本アカデミー賞受賞を受賞した藤井道人監督の最新作。藤井監督がこんなに柔らかく優しいフィルムを撮るのは意外でしたが、清原果耶が若手女優の中で唯一無二の存在であることが実感できます。

 作品情報 2020年日本映画 監督:藤井道人 出演:清原果耶、桃井かおり、伊藤健太郎 上映時間115分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2020年劇場鑑賞173本 



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 【ストーリー】
 中学生の大石つばめ(清原果耶)は隣人で年上の浅倉亨(伊藤健太郎)が好きだが、なかなか言い出せない。学校ではネットの裏垢に同級生の笹山(醍醐虎汰朗)のことをめぐってひどいことを書かれ、家庭では父(吉岡秀隆)の後妻でつばめの義母になる麻子(坂井真紀)が妊娠し、なんとなく居心地の悪い日を過ごしていた。

 書道塾が終わった後、ビルの屋上で一息住むのが日課だったつばめ。ある晩、謎の老婆、星野とよ(桃井かおり)があらわれる。最初は気味悪がったつばめだが、彼女が空を飛べることをしり、星婆と名付ける。食いしん坊の星婆に家からもってきた野菜や弁当の残りをあげ、かわりにいろいろな相談にのってもらうようになり…

 【感想】
 自分に居心地の悪さを感じている中学生視点の物語というと韓国映画の「はちどり」を思い出しますが、本作は星婆というファンタジーめいた存在をいれることで、非常に柔らかく感じられます。清原が出演した藤井監督作品の「デイアンドナイト」の尖がって孤独で清冽な世界観との違いにびっくりするほどです。

 確かにネットでの悪口とか実母(水野美紀)に捨てられたとか、不幸な状況もあります。でも、今の両親や亨はつばめのことを暖かく見守っています。父との喧嘩シーンで、べたな映画だったら父親に平手打ちさせるだろうに、まったく違う感じの親心をみせてくれた演出は素直に拍手を贈りたくなりました。

 さらに、書道教室の教師、牛山(山中崇)が、はちどり同様、女子中学生のメンターとなって、生き方のヒントを与えてくれます。山中は悪役が多く、「デイアンドナイト」でも悪役だったので、実はロリコンだった(笑)とか豹変するのではとも恐れましたが、やさしくも怪しくもある笑顔でうまく演じていました。各章ごとの水墨画もいい味を出しています。

 こうした周囲の気遣いになかなか素直になれないというのは、つばめが人との距離感がつかみにくかったのでしょう。そこへ星婆というファンタジー的で、でも桃井かおりが演じることで、独特の存在感を放つ存在がでたことで、つばめの壁を壊していきます。この桃井と清原の競演はみもの。樹木希林なきあと、怪女優というポジションは桃井が受け継ぎそう。そして、若手女優のホープ清原。この2人の演技をスクリーンでみられるのは至福といえましょう。

 なんとはない話ともいえますが、見終わったあとのほっこり感はなんとも尊いもの。何気に同時期に作品が4作も公開されている伊藤健太郎の本作でのアシストぶりや、亨の姉役の清水くるみの繊細で壊れそうなゆれかたも、よしよし、という感じ。ベテランと若手のミックスが味わえる、おいしい邦画といえましょう。
posted by 映画好きパパ at 07:51 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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