2020年09月19日

二人ノ世界

 生きることの強さ、弱さ、見にくさを正面から誠実に受け止めた印象。製作スタッフは大学生中心だそうで、これだけ人間の本質を考えさせられる傑作をつくれるなんて何ともすごいものです。

 作品情報 2017年日本映画 監督:藤本啓太 出演:永瀬正敏、土居志央梨、牧口元美 上映時間104分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマ港北ニュータウン 2020年劇場鑑賞179本



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 【ストーリー】
 バイク事故で30代の若さなのに下半身不随になった俊作(永瀬正敏)。人生に自暴自棄となり、やってきたヘルパーにも次々と暴言を浴びせやめさせてしまい、年老いた父親の吾作(牧口元美)が一人で面倒をみていた。

 ある日、ヘルパー募集の話を聞いて、華恵(土居志央梨)という女性がやってくる。ところが、華恵は全盲でヘルパーの資格もなかった。最初は驚く俊作だったが、他にヘルパーもおらず彼女を雇うことになる。一方、華恵もほかに働き口がなくまじめにヘルパーをはじめたのだが…

 【感想】
 プロットだけを見ると、フランス映画の「最強のふたり」を想起します。でも、単なるハートウォーミングなはなしではなく、しかも最強のふたりのような恵まれた金持ちの話でもないので、シビアな日本の現実を突きつけられます。

 俊作はまだ若いし性欲もある。夢もあった。それが突然、断ち切られてしまう。華恵も中途失明であり、盲目になったために大切なものを失ってしまいました。それで自暴自棄になった俊作に対し、華恵は生活のこともあり、前向きに生きようとします。障害者だからといって、みんなかわいそうでつらい存在とみられるのではなく、幸せだとも言い切ります。この2人がぶつかりつつも、徐々に距離を縮めていくようすは何ともほほえましくなります。

 なにしろ、俊作のセクハラ発言にも平手打ちで返すほどの強さ。俊作が見世物になりたくないとひきこもりになっているのに、見世物になりにいきましうと連れ出す強さ。でも、世の中はそんなに甘くはありません。次々にふりかかるょ理不尽さは、本人たちの責任でもないし、でも、こうなっても仕方がないという部分もあるし、みていて胸が痛みます。あれだけ気丈な華恵の悲痛な叫びと、それへの回答は、本当にすごい。

 また、老いた吾作の息子への愛情や、人を信じるしかない選択。そして、俊作の悪友の後藤(近藤和見)の、2人にたいして特に身構えず、普通に接する姿。人間の嫌な姿やつらい姿もあるけど、優しい人もいるといのが人間の社会の良さを感じられほっとします。

 舞台は京都で、京都弁の良さ冷たさ両方が味わえます。俊作宅である古ぼけた民家や、下町の商店街などロケ地もぴったりだし、撮影や美術もうまい。本当に今年は邦画の当たり年だとつくづくうれしくなります。
posted by 映画好きパパ at 07:17 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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