作品情報 2019年日本映画 監督:荒木伸二 出演:中村倫也、石橋静河、立花恵理 上映時間111分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマ座間 2020年劇場鑑賞192本
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【ストーリー】
借金取りにぼこぼこにされていた青年・蒼山(中村倫也)はポール(山中聡)と名乗る黄色いつなぎを来た男に助けられ、「町」に行くことを提案される。貸し切りバスで案内された「町」は、同じように行き場がなくなった人が集められていた。
「町」では住民が互いのことを「デュード」と呼びあい、黄色いつなぎを着た「チューター」たちに管理されていた。最低限の衣食住が保証される代わりに奇妙な仕事をする必要があった。そして、町から脱走しようとすると、体内に取り付けられた装置で阻止され仕組みだった。次第に町に順応してきた蒼山だが、妹を探しに町に潜入した木村紅子(石橋静河)と出会い、町のおかしさに気付いていく。
【感想】
生活保護受給者や貧困高齢者を集めた施設が現実でも問題になっていますが、「町」はそれをさらに一歩進めた感じ。脱出すると体内に取り付けられた装置から脳内に爆音音楽が響き、逃げられないようにしていますが、技術的にも近未来にはできそう。こういうディストピアが日本にできてもおかしくないと思いまs。
「町」がうまいのは、衣食住を保証しているうえに、自由に性愛ができる仕組みもつくっていること。プールや部屋でのパーティーのような娯楽施設があり、将来のことを何も考えずに、今を享楽的に暮らすのだったら、それなりに順応していけるということです。借金、DV、犯罪者など、普通の生活から落ちこぼれた人にとって、居場所があり、見た目は暴力的な管理を受けないだけでも安らげるという設定はうまい。
蒼山は先に入居した若い女性、末永緑(立花恵理)と次第に親しくなりますが、彼女のようなセクシーな女性と毎日楽しく暮らせるのなら、つらい現実から目をそむけられる楽園ともいえましょう。代わりの仕事はSNSで商品評価、選挙の替え玉投票といったグレーゾーンの仕事。町をだれが設立したか直接はでてきませんが、思考を停止したけど人数にはなるという人々を、利用したいというニーズは多いのでしょう。
そんな蒼山が紅子と出会って、生きることの意味を考えていくというのは、この手の映画の定番といえるでしょう。ただ、ディストピアがすぐそこにあるということを観客に気付かせてくれるという効果は十分にあり、見終わった後、心がざわざわとします。低予算だけどアイデア勝負という形です。
中村は本当に変わった作品、役柄に挑戦するのが多く、彼の出演作はみていて飽きません。石橋の持ち味である青臭さも、この映画にはあっていました。そんななか、映画初出演の立花が生硬だけどみずみずしさもある存在感で楽しめました。
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