作品情報 2020年日本映画 監督:内田英治 出演:草なぎ剛、服部樹咲、水川あさみ 上映時間124分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマ茅ヶ崎 2020年劇場鑑賞198本
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【ストーリー】
新宿のニューハーフクラブバーで働くトランスジェンダーの凪沙(草なぎ剛)のところに、実家の広島から遠縁の桜田一果(服部樹咲)が訪ねてくる。実母の早織(水川あさみ)から虐待をうけ、通報騒ぎになり、親戚一同が広島から離れた東京で働く凪沙に預けることにしたのだ。
凪沙は子ども嫌いのうえ、実家に自分が女であることを隠しており、一果を突き放す。一果も他人とのコミュニケーションが極端にとれないなか、共同生活が始まった。ある日、一果は町でみかけたバレエ教室に興味を持ち、講師の片平(真飛聖)に誘われレッスンに加わるのだが…
【感想】
自分の性に子供のころから違和感があり、故郷を離れてようやくだれもしらない東京で、自分の思うままにできるはずだった凪沙。しかし、現実では直接間接的な周囲の目も金銭的な問題もあり、思うように生きられません。しかも、同僚のニューハーフより年も取り、美形でもない。人生どうしようもない行き詰まりのときにあらわれたのが一果でした。
一果の方も酒乱で男好きの母親に育てられ、自分が好きだったバレエなんかとんでもないとやらせてもらえません。学校でも浮いた存在で、東京に来たら凪沙のせいで、余計、周囲はひいてしまい距離が起きる。そんななか、バレエ教室で声をかけてくれた同級生の桑田りん(上野鈴華)と、片平の存在が唯一の救いでした。みにくいアヒルの子でないですが、貧乏で薄汚れた一果の才能がかえってすごみをたてます。
そして、たまたま一果の踊りをみたことで、凪沙にも生きる目標のようなものがでてきます。一果の夢を応援したい。自分が彼女の母親代わりになりたい。片平からうっかり、凪沙のことを「(一果の)お母さん」と呼ばれたとき、凪沙はどんなにうれしかったでしょう。そして、一果から踊りを習うシーン。2人の踊りをみていた老紳士(堀田真三)が「2人のお姫様」といってくれた。こんな些細なことが人の幸せを表してくれてジーンとしてきます。
凪沙と一果のメインストーリーは確かに感動的なんだけど、僕はりんと沙織の2人のキャラがしっかりと描かれていて、そちらにも強く心をうたれました。金持ちで不自由なく育てられたりん。しかし、両親(佐藤江梨子、平山祐介)は彼女のことをペットのように愛玩するだけで、一人の人間としてみてくれない。そんななか、一果という親友ができたけど、バレエの才能というのは残酷でみるみる彼女においておかれる。そして…、というのは、才能のない人間への運命の残酷さがもろにでていて、胸が苦しくなりました。二人が同じ音楽に合わせて別々の場所で踊るシーンは、バレエ映画の定石とはいえ、僕自身、この映画の中で一番好きなシーンです。
沙織も水川あさみがこれまでのイメージを覆すような熱演で、一人の人間としてのキャラクターを膨らませてくれました。愛し方はあさってだし、LGBTへの偏見むきだしだけど、彼女の悲しみというのがストレートに伝わってきました。
とにかく、緊張の糸がぴんと張り詰める中、草なぎ、水川といった売れっ子が体当たりで演じて、少女役2人をひっぱってくれた傑作です。エンドロールのあとも見逃せませんでした。
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